なぜドS上司には、相づち厳禁なのか

豊田真由子衆議院議員の秘書への強烈なハラスメント、乱暴な振る舞いは異例です。ただ豊田議員のような、問題を解決するためにコミュニケーションをとるのではなく、「他人を攻撃すること」自体が目的になっている人は世の中にいるもの。ハラスメントまがいの上司にはどう対応すればいいのでしょうか。

1つの方法は「奇襲」です。ドS上司は、相手に屈辱感を与えることが目的です。言い換えると、他人の面前で恥をかかせるのが快感なのです。そこで、「ここまでのリアクションをされたら困る」と相手が思う行動をサプライズでしてみせるのです。

例えば詰問に対して、突如フロアに響き渡るような声で泣き出す。突然土下座をして大声で謝る。そうして「そこまでのことをやったんだ」と周囲に知らしめ、「やりすぎてしまった」と上司に思い知らせるのです。ドS上司を上回る過激さで、自分が受けたダメージを、実際以上にアピールする。そうすると、上司も平然とは攻撃を続けられません。

サディスティックな相手に対して、弁解や謝罪は「こいつはイジメがいのある相手だ」と思わせるだけです。そこで前述のように過激に振る舞うわけですが、それが難しい場合、次にとるべき手段は「無反応」です。

相手の攻撃に対して、徹底的に無反応を貫く。とにかくドS上司にダメージを確認させないことです。相づちも、「話を聞いている」というシグナルになるのでいけません。これは、「相づちをする元気もない」と、周囲から同情され、許容される効果もあります。また、上司の話の際に顔を上げていると、挑戦的、反抗的態度と思われてしまい、逆に火に油を注ぐ可能性もあります。相手は常に揚げ足をとりたがっているので、リアクションをしないことです。

すると、「あいつは何を考えているかまったくわからない」と思われ、自分のいないところで悪口を言われるかもしれません。しかし、イジメのターゲット、リストから外れることが第一の目的なのです。ただ、いずれの場合もメンタル的に無傷ではいられません。ダンマリを決めこんでも罵詈雑言は飛んでくるわけです。そこで、自分の心理的ダメージを減らす方法を考えるのも大切です。

「自分ではない誰かが叱責を受けている」

癌を宣告された患者が、ショックを避けるために「知らない人が知らない人に病名を告げている」と、傍観者のように状況を客観視させるという、いわば「幽体離脱」のようなメンタルのガード方法があります。それをドS上司の攻撃にも応用して、「自分ではない誰かが叱責を受けている」と、非現実感を利用して、現実をモロに受け止めるのではなく、ハラスメントから身を守るのです。

さらに、誰でも気軽にできる最もポピュラーな方法が「受動的攻撃」、つまりサボタージュです。わざと仕事をノロノロ進めたり、わかりきったことをしつこいくらい聞きにいく。積極的に反撃しては相手の攻撃を強めてしまうので、合法範囲内で足を引っ張るという消極的な反撃方法です。そうすることで、「やられっぱなしではなかった」とメンタルを保護することもできるのです。

(構成=伊藤達也)
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