路線変更には地元からの反対も
オープン時に安価だった価格帯も見直し、しっかりと付加価値のとれる店へと変化しつつ、今に至っています。そのような路線変更に対し、当初は地元からかなりの反対があったそうです。しかし今は、地元の方々も記念日など「ハレの日」に使う店へと定着しています。
さらに、尖ったコンセプトに刺激を受けた国内外の料理人との人脈も広がり、料理そのものの進化も加速。その際には先のエゾシカ熟成肉も紹介しているため、今では取扱店のマップもできました。相楽社長とのコラボレーションの成果です。
小さな鮮魚店の変革が、新たな地元食材の利用拡大や、多くのリピーターが訪れる目的につながり、さらに年に一度音楽フェスを開催するなど、地域全体に大きな影響を与えるまでに成長していっているのです。
まちが変わっていくためには、時代遅れの大規模な施設開発などよりも、小さいけれども尖った1つの店が成長していくことのほうが、よっぽど大切なのだとわかります。
まちビジネス事業家。1982年生まれ。高校在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長に就任。05年早稲田大学政治経済学部卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学。在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。07年より全国各地でまち会社へ投資、経営を行う。09年全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)、『まちで闘う方法論』(学芸出版社)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(共著、日経BP社)などがある。