自分で切った木で家を建てるのが夢

実は林業の世界もサラリーマン化が進み、土日の週休2日が当たり前となりつつある。しかし、平日の天候が不順で作業ができないと、その後の作業計画の進行に支障をきたしかねない。

倒す方向を見極めながらチェーンソーで伐採作業を続ける藤田さん(写真上)。チェーンソーを入れる場所を間違えると自分のほうに木が倒れるため、細心の注意を払う。70個以上あるチェーンソーの刃を研ぐ「目立て」は、伐採の作業効率を左右する大切な仕事だ(写真下)。

「自然相手の仕事だけに、自分たちが自然に合わせることも必要になります。そこで今の枠にとらわれない新しい林業の確立を目指しながら、自分たちの理想のライフスタイルを実現していこうと、今の会社を立ち上げました」

しかし、黙っていても仕事がやってくるわけではなく、藤田さんは地元の森林組合や行政機関を回り、少しずつ信頼関係を築き上げながら新規の取引先を開拓してきた。そうした結果、3年目で黒字に転換したという。

「会社の立ち上げから2年ほどはスノーボードを少し我慢しなくてはなりませんでした。しかし、今年の冬からスノーボードを楽しむ自分のライフスタイルを取り戻せるようになりました。それも仲間の理解があればこそです」

そう話す藤田さんが愛用しているスノーボードは、外国メーカーのキットを買ってきて、自分でチェーンソーの形に加工したもの。ゲレンデで「どこで買ったの」と注目の的になることが、しばしばあるそうだ。もちろん、当初の夢を諦めたわけではなく、いつか自分で切った木でスノーボードを作り、自分が伐採した山の斜面をそれで滑り降りたいと藤田さんは考えている。

「また、妻とは自分が切った木を使って家を建てたいと話しています。私と妻、そして愛犬が1匹の家族ですから、小さな家で十分です。暖炉を備えれば、冬は自分たちで作った薪で暖をとることもできます」と楽しげに語る藤田さんの飛騨でのハッピーライフは、これからさらに進化を遂げることになりそうだ。

(撮影=石橋素幸)
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