年収は300万円台後半くらい

また、林業の世界は「日給月給」という決まった日給での仕事をどのくらいこなしたかで、月給が決まる独特の賃金システムを採っていることも、藤田さんの目にはメリットとして映った。「春から秋まで思い切り稼ぎます。そして冬になったら、その稼ぎを使いながら毎日スノーボードを楽しむのです。雪が降り積もって山での作業ができない冬の間は、仕事はお休みです」と、藤田さんは笑みを浮かべながら話す。

とはいえ、林業の世界は甘くない。チェーンソーには70個を超える小さな刃がついている。その1つひとつを研ぐ「目立て」というメンテナンスが不可欠で、効率よく伐採できるように研ぎ上げられて初めて、一人前と認められる。しかし、そうなるまでに藤田さんは5年もの月日を要した。

民間の林業会社や森林組合などに勤めながら修業の日々を重ねていた藤田さんが、高山市内のアパートから飛騨市内の空き家に越してきたのが、林業の世界に飛び込んでから3年目のこと。家賃は月3万円ほどだった。13年前に結婚した妻の真紀子さんの実家が空き、今はそこに賃貸で住んでいる。

「出来高に応じたボーナスを含めると、年収は300万円台後半くらいでしょうか。こちらでは1人に1台の車が必要で、ガソリン代は都会と比べて割高です。物価は総じて高いのですが、近所のおばあさんが『これを食べて』と野菜を持ってきてくれたりして、大変助かっています。月20万円から25万円もあれば、十分に暮らしていけます」

もちろんスノーボードは続けていて、スキー場のオープンからクローズまで、約3カ月間の通しで利用できる3万円ほどの「シーズン券」を購入している。行けば行くほど1回当たりの利用料が割安になるわけで、藤田さんのような人にとってはうってつけの券なのだ。