健診の目的は「徴兵検査」だった

日本はどうでしょうか。これだけ多項目の定期健診をする国は、世界でも日本だけです。日本で健康診断が始まったのは明治以降。その目的は「徴兵検査」でした。2014年、座高測定が廃止された理由は「健康管理とは関係ないから」。座高測定は、足が短ければ重心が低くなり、「いい兵士になる」という理由で始まったのです。

国策による医療政策は、つねに「一律」で行われます。それは国の都合を反映させたもので、必ずしも患者のためではない。たとえば全員が「メタボ健診」を受ける必要はないはずです。

医療とはどうあるべきか。医師アンケート(※)でも(10)の設問で回答が分かれました。「コスト」の議論だけでは個人化に対応した医療は実現できません。たとえば(4)は医療費は削減されるでしょうが、画像診断を受けられず不安を募らせる人もいるでしょう。患者の不安に応えるのも医療者の役割。一律の判断は誰のためなのか。もう一歩踏み込んだ議論が必要でしょう。

(※)日本の医師の3人に1人が登録する医師専用サイト「メドピア」の全面協力で、プレジデント誌が2度にわたり、前代未聞の匿名アンケートを実施。

(構成=伊藤達也)
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