環太平洋連携協定(TPP)の交渉でも漁業の補助金がひとつの争点となりました。また、国連の持続可能な開発目標(SGDs)でも、乱獲や違法漁獲につながる漁業補助金の禁止・撤廃がうたわれています(14.6)。
漁業補助金の国際比較
世界各国の漁業補助金の総額は、おおむね200-400億ドル(約2兆~4兆円)と推定されています。漁業補助金は、漁船の建造、燃油代の補助、インフラ整備など、さまざまな形態をとるので、推定値には幅があり、正確な把握を難しくさせています。
カナダのブリティッシュコロンビア大のグループが2016年にまとめた論文によると、世界の漁業補助金の総額は350億ドルでした。また、補助金の内容を精査したところ、乱獲の助長につながる「悪玉補助金」(漁獲量の拡大のための補助金)が200億ドルと、その大部分を占めることが分かりました。
国別に見ると、日本の漁業補助金が最も多く、全世界の約20%のシェアを占めています。中国、米国がそれに追従するのですが、米国は悪玉補助金が少ないのが特長です。悪玉補助金の割合は、中国よりも日本のほうが高く、こちらも金額として世界第1位でした。日本は世界一の「漁業補助金大国」なのです。
日本の漁業補助金の用途を見てみましょう。2017年の日本の水産関係予算の約4割が公共事業です。震災復興予算の漁港整備も含めると、予算の7割が公共事業に費やされています。漁業者よりもむしろ土木事業者にお金が落ちているのです。漁村地域に行くと、バス停ごとに立派な漁港があります。そこには、老朽化して、稼働している様子が無い漁船が並んでいます。漁業者も漁業生産も激減している中で、すでに稼働率が下がっている漁港ばかりが立派になっているのです。