Q:党内で安倍3選を阻止する動きはないのか?

A:無投票で再選された前回の総裁選のような無風とはならないだろう。各種世論調査では、ポスト安倍として石破茂議員を推す声が多いようである。自民党総裁選挙は、議員投票(議員1人1票で、現在は400強)と議員票と同数の党員投票(400強)の合計で行われるため、世論からの人気は、党員投票での支持を通じ、石破氏にとって大きなプラス材料である。

しかし、ここで過半数を得る候補者がいない場合には、上位2名による決選投票が行われるが、そこでは議員票が400強なのに対し、党員票は各都道府県1票の47しか割り当てられない。つまり、決選投票では、議員票を集めた候補が有利となる。石破派(20名)が党内で小派閥であることを考えると、1回目の投票で党員票を中心に過半数を得て勝ち抜くことが、石破氏にとっては鍵となる。

なお、現時点で石破氏の経済政策全般に対するスタンスは明確にはなっていないが、地方創生が政策の柱になると見られる。総裁選に出馬することになれば、政策スタンスも明らかになるだろうが、アベノミクスを踏襲した上で、地方創生を軸に独自色を打ち出すのか、それとも新たなイシバノミクスを打ち出すのか、注目される。

Q:岸田政調会長が出馬する可能性はないのか?

A:岸田政調会長がポスト安倍の有力候補なのは間違いないが、18年9月の総裁選に出馬するのか、それとも安倍総裁の3選後に出馬するのかは不明である。

ただ、自民党の派閥のパワーバランスを見ると、自民党の最大派閥は安倍首相を支える細田派(96名)であり、次いで麻生派(59名)、額賀派(55名)で、岸田派(46名)、二階派(42名)がそれに続く。党内での人望が厚いといわれる岸田氏だが、派閥の人数だけから判断すると、党内の地盤はそれほど固いものではないようにも見える。岸田政調会長が自民党総裁を目指すなら、まずは政調会長の立場から「与党」として安倍政権を支えた上で、安倍首相から禅譲を受け、最大派閥の細田派からの支持を得る方が確実なように思える。

渡邊 誠
三井住友アセットマネジメント シニアエコノミスト
1974年、東京都生まれ。一橋大学大学院 国際企業戦略研究科修士課程修了。98年慶応義塾大学経済学部卒業後、第一生命保険入社。第一生命経済研究所経済調査部、ドイツトレーニー、ロンドン駐在などを経て、2012年1月BNPパリバ証券入社、経済調査部シニアエコノミストとして勤務。16年2月より現職。
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