シニア社員制度は「多様化」していく

(2)給与・賞与制度

再雇用後の賃金については、定年前の給与水準をベースに決定するケースが多く見られます。「定年前の基本給×60%」といった決定方法です。

しかしながら、定年前の給与水準はあくまで、それまでの役割や貢献によって決定された賃金です。本来は、60歳以降の職務や役割、貢献度に応じて決定するのが、妥当ではないでしょうか。

そこで、定年までの役職、等級、給与水準といった要素はいったんご破算にし、60歳時点での能力を再評価して、その後の役割により等級ランクや賃金決定する方式を検討すべきです。

たいていの会社で、定年後も引き続き意欲を持って仕事をする人がいる半面、急速にやる気をなくし消極的な姿勢になってしまう人が存在するのも事実です。緊張感を維持してもらうためにも、60歳以降も給与や賞与は変動する、という仕組みが望ましいと考えます。

(3)シニア社員の人事評価

再雇用後の社員には、目標管理や人事評価を行わない会社があります。また、多くの場合、再雇用後は仕事の役割が変わるにも関わらず、それを明文化し、本人に伝えることを怠っているのではないでしょうか。しかし、それでは定年後の緊張感が維持しづらくなるだけでなく、自らの役割認識が希薄になってしまいます。

そこで、シニア社員にこそ目標管理を実施し、年度ごとの期待役割や期待貢献を明確にし、達成度確認や人事評価も行うべきです。できれば、それを賃金だけでなく、表彰制度やインセンティブに反映してみてもよいでしょう。シニア社員に対しても、仕事に対する意欲や達成感を、高く持ち続けてもらう仕組みが必要なのです。

政府は昨今、65歳以降も働き続けられる社会の実現を目指そうとしています。一方で、労働者側も、「できれば65歳を超えても働きたい」という人が少なくありません。日本人ならではの傾向だと思いますが、この点においては、政府と働く人の考えが一致しているのです。企業は、65歳以降の雇用について、真剣に考えるタイミングを迎えています。

シニア社員制度のキーワードは「多様化」です。各人の意向や能力、組織上の必要性に応じて、定年後の仕組みを考えていくことが重要なのです。その際には、兼業・副業推奨や起業支援プランなども、有力な選択肢となるでしょう。

関連記事
65歳から稼ぐ人、稼げない人
再雇用で歓迎される人、嫌われる人
「定年後」は部長より高卒叩き上げが元気
完全に"詰んだ"「貧困高齢者」が爆増する
"死ぬまでSEX"に注がれる高齢者の熱視線