アパレル凋落の大きな原因になった消費トレンドの変化がもう一つある。ネット(Eコマース)と物流(宅配)の進化によって、消費行動がリアルからサイバーにシフトしてきたことだ。

ゾゾタウンの一人勝ち状態だが…

たとえばアパレルのオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」。EC化率が低いアパレルにあって2004年開設のゾゾタウンは右肩上がりで業績を伸ばしてきた。最大の強みはブランドの豊富さ。取り扱いブランド数は今では3900以上で、人気ブランドも数多く集まっている。

一頃スペシャリティストアがこぞって地方都市に進出した時期があったが、リアル店舗の出店には自ずと限界がある。しかしECならば全国一斉、しかもフルラインアップで展開できる。近くに実売店がない地方のユーザーだって、スマホからゾゾタウンのサイトにアクセスして、豊富なブランドからワンストップでお気に入りのブランドの最新アイテムが買えるわけだ。

ファッションECのウィークポイントは「試着ができない」ことだが、着用したイメージが湧きやすいようにサイトの使い勝手を非常に工夫しているし、サイズが合わなかったり気に入らなかったりしたら、無料で返品できる仕組みもある。ゾゾタウンに出店しているショップのスタッフがコーディネート例を提案したり、「公認ユーザー」によるオリジナルコーディネートを発表したりといったユーザー目線のサービスも一役買っている。

いわばカリスマ店員がいるショップが手元にあるようなもので、スマホからの買い物に慣れ親しんだ若い世代からすれば、リアル店舗に行くよりよほど快適にショッピングできる。かくしてゾゾタウンに顧客が集まり、顧客が集まるから出店希望のブランドが集まるという好循環。リアル店舗が次々と消えていくアパレル業界で、ゾゾタウンの一人勝ち状態が続いている。

メルカリの安心・安全な売買システム

他方、タンスやクローゼットにしまい込まれた中古衣料に光を当てて急成長しているECサイトがある。フリマ(フリーマーケット)アプリ最大手の「メルカリ」だ。

スマホを使って衣料品や雑貨などの個人の持ち物を売買するのがフリマアプリ。売りたいものをスマホで撮影して、フリーマーケットのように自分で値段をつけて出品するだけ。出品も購入もボタン一つで簡単にできる。メルカリは登録も出品も無料で、売買が成立した場合に販売価格の10%が販売手数料として徴収される。

金銭のやり取りが当事者同士にまかされている(ゆえにトラブルも起きやすい)オークションサイトなどとは違って、メルカリの場合、お金のやり取りをメルカリが仲介する。購入者が届いた商品に納得したら出品者に代金が振り込まれるという安心・安全なエスクロー(売り手と買い手を仲介する第三者)を介した売買システムを採用しているのだ。この手軽さと信頼性が支持されて、日本でのダウンロード数は5000万を突破、アメリカでも2500万を超えている。