千葉県がんセンターの隠蔽体質

千葉県がんセンターでは2014年、過去7年間に胃や膵臓(すいぞう)を摘出するために腹腔鏡手術を受けた患者9人(後に11人と判明)が手術後相次いで亡くなっていたことが明らかになった。

その4年も前に、麻酔科医の志村福子は、下手な執刀医によって難易度の高い腹腔鏡手術が指導医不在のまま行われていたことに危惧を抱いていた。

手術にかかる時間が長く、再手術も頻繁に行われていた。彼女の上司の手術管理部長であった麻酔科医は、再手術の麻酔を研修中の歯科医師に担当させたこともあった。

再手術で、患者が心肺停止になるなどのケースが起きているのに、センターでは事故調査委員会も開かれない。

思い余って上司に上申したが、その見返りは報復だった。その後志村は退職に追い込まれ、告発を決意するが、県病院局とやり取りしても、厚生労働省の公益通報窓口に実名で告発メールを送付しても、窓口から返ってきたのは「公益通報に当てはまらない」というものだった。

結局、事態が動いたのは3年後に、センター内部から週刊誌への告発がなされてからだった。

雪印食品の牛肉偽装事件

2002年の雪印食品の牛肉偽装事件は、同社の取引先だった西宮冷蔵の水谷洋一社長の告発で明るみに出た。

一時はマスコミの寵児となったが、彼のところと取引していた大手が、次々に撤退していってしまった。

2003年には西宮冷蔵も休業に追い込まれる。04年に営業を再開してからは、何とかカンパを募ってやっているそうだがどこまで続くか。

この特集にはないが、秋田書店が漫画雑誌の読者プレゼントで景品数を水増ししていた“事件”があった。そのことをやめるよう会社に訴えた景品担当の女性社員(28)は、「プレゼントを窃取した」などと難癖をつけられて懲戒解雇されてしまうのである。

日本のようなムラ社会では、不正を声高に指摘したり、メディアに告発したりする人間は「裏切者」「密告者」といわれ、ムラからはじき出されてしまうのである。

これで民主国家といえるのか

先の三井環はこう話している。

「そういう国ですよ、日本は。一度口を開いたら、2度とその“ムラ”にはいられない。だから、ほとんどの人は矛盾を感じていても口を噤(つぐ)むのです」

だが、前川喜平の内部告発で安倍政権が一気に崩壊へと雪崩を打つ姿を見て、どれほど強靱な岩盤でも、ひとつの内部告発があれば穴を開けられることを国民が知ったはずである。

これからやるべきことは「公益通報者保護法」を改正し、内部通報者の法的な保護を明記することである。そうすれば、志のある内部通報者が次々に出てくるはずだ。加計学園にも、獣医学部新設に異議を唱える教授たちが多くいると、メディアで報じられている。そうした人たちもこぞって声を上げるに違いない。不正を見て見ぬふりのできない内部告発者がバカを見ない国、損をしない国にしなければ、民主国家とはいえない。

(写真=時事通信フォト)
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