睡眠不足は仕事の成果にも影響する

今回、番組の事前告知にあたって「削っていたのは、睡眠時間じゃない。命でした。」というキャッチコピーが用いられた。このコピーを書いたコピーライターのこやま淳子氏は、睡眠の重要性を再認識しつつ、コピーに込めた意図をこう述懐する。

「『睡眠時間を削る』という言葉って、自慢げな文脈で使われることが多いですよね。『睡眠を削って仕事した・勉強した』といった用法ですが、それがどんなにダメなことなのか、なるべくショッキングに伝えたいと思いました。他にも『6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜した脳とほぼ同じ。』『太りやすい。空気読めない。勝負に弱い。それ、睡眠負債のせいかもしれない。』というコピーもありました。でも、番組の内容が衝撃的だったので、それをどう端的に伝えられるかということに注力しました」

こやま氏も過剰な労働時間で知られる広告業界で働いているだけに、これまでにオーバーワーク気味の人は多数見てきた。自身も長時間働く生活が続いているが、「睡眠軽視」ともいえる風潮は変えていかなくてはならないと語る。

「私はよく寝ないと仕事が全くはかどらない人間です。他の国の事情は分かりませんが、日本では睡眠不足=仕事のできる人、みたいな変なイメージがあります。そのため『仕事の効率が落ちるから早く帰って寝たい』なんてことを、実際にはなかなか口にできません。ただ、この番組では、睡眠不足は健康被害があるだけでなく、仕事・作業の効率も明らかに下がることを実証しているので、もっとこの内容が浸透すれば、状況は変わるのではないかと思います」

睡眠時間が増えて、年収もアップ

私は現在、43歳。世間的にはいわゆる「働き盛り」に含まれると思うが、睡眠時間はけっこう多い。大抵の日は24時には寝て、翌朝6時30分~7時ごろに起きる。土日などは、22時に寝て、そのまま朝の7時まで起きない──なんてこともザラだ。

だが、35歳くらいまでは「寝ないオレ、カッコイイ!」みたいな意識もあり、長時間労働をことさらにアピールするような面があった。なにしろ、メールをわざと午前2時~4時ごろにかけて大量に送信し、「頑張ってるオレ」アピールをしていたのだ。すると、一部には私と張り合うかのごとく、すぐに返事を寄こしてくる人もいて、「お互い大変ですな、ハッハッハッ!」と表面上は自虐的にシンパシーを表明しつつ、実際は互いに「できる男」アピールをぶつけ合っていたこともある。

いまとなっては、そうしたアピールが実にバカげた行為であることを理解する一方、「自分に必要な睡眠時間をきちんと確保したい」という意識を非常に強く持つようになっている。

最近、私は早朝のアポや、原稿の締め切りなど特別な事情がないかぎり、目覚まし時計をセットしないで寝る。とにかく寝たいだけ寝るようにしているのだ。しかし、大抵の場合は6時間~8時間程度で気持ちよく目覚めるので、「寝すぎて調子が悪い」ということもない。

こんなことを言うと「えっ、そんなにたくさん寝てるんですか~!?」「それで仕事は片づくのですか?」なんて返されることも少なくない。が、集中して仕事をすれば、1日の労働時間が1日6~8時間程度であっても、その日の業務は問題なく片付けられる。そうして夜はサッと飲みに行き、それほど長居せずに帰宅。家でゆっくりと過ごしつつ、眠くなったら寝る。そんな生活をここ数年間送っていて、すこぶる健康だし、仕事量も順調に増えている。さらに付け加えてしまえば、睡眠時間をしっかり確保するようになってから、年収も確実にアップした。