昼寝を否定するようになったのは日清戦争以降
睡眠の重要性を伝える活動は、中学校でも導入されているという。
2017年6月16日、TBS系の夕方ニュース番組『Nスタ』で、岐阜県の大垣市立北中学校が毎日13時10分から13時20分にかけてシエスタ(昼寝)の時間を設けていると紹介した。街頭インタビューでは親世代から「学校にいる時間にもったいない」「いいことだと思う」など賛否両論が挙がったが、同中学校の生徒からは「(午後は)嫌いな国語ですけど、頑張れそうです」といった感想もあった。
いまの日本では、昼寝をすることが憚られる風潮があるが、番組ではそのルーツは日清戦争にあると説明していた。江戸時代は農民が多かったこともあり、昼寝はごく一般的な習慣だった。しかし日清戦争後に”国民総武士化”のような機運が生じ、「昼寝をするなんて輩は、ダメなヤツ」という認識が生まれたのだとか。同中学校の施策は、かつて日本で一般的だった昼寝推奨文化を取り戻す試みであり、校長先生は「すっきりして午後の授業の集中力を高めてほしい」と答えていた。
クラウドファンディングで昼寝専用枕を実現
昼寝については、企業も取り組みを始めている。たとえば、寝具メーカーのエアウィーヴは、昼寝専用枕「ナピロー」の開発資金をクラウドファンディングにより調達した。午後の仕事に入る前に注入するエナジードリンクのごとく、「リチャージとしての昼寝」を後押しする取り組みを謳い、1口5000円(複数購入の場合は割引あり)で540万円集まればプロジェクトは成立。完成したナピローが支援者に送られるという内容だ。結局、2017年3月14日~5月30日の実施期間に、1719人の支援者から1035万4500円の資金が寄せられた。現在、支援者の手元に製品が順次届けられているという。
今回のクラウドファンディングに関連した新聞広告では、「誰かが15分間の昼寝をとる時、周囲が放っておいてくれる会社を増やしたいのです」と掲げられていた。エアウィーヴのマーケティング担当執行役員の須田伸氏は、昼寝の効果と必要性についてこう語る。
「職場でのお昼寝は、厚生労働省『健康づくりのための睡眠指針 2014』のなかでも『午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立ちます』と明確に推奨されています。また睡眠中に記憶が定着するため、クリエイティブな新しい発想が得られるなどの効果も期待できます。アメリカでは『パワーナップ(Power-nap)』という言葉が一般的であるほど、その効果が広く認知されています。
会社の机で昼寝、というと落ちこぼれサラリーマンの典型のように描かれたのは、もう過去の話。ビジネスパーソンは、パワーナップを積極的に取り入れ、仕事の効率を上げるべきです。そのためにはナピローのような適切な寝具の活用も大切ですが、それ以上に、こうした昼寝の効果を経営者が認識し、社員のパワーナップを否定せずむしろ推奨する環境を実現することこそが、もっとも必要なものだと思います」