要介護の姑を“操縦”する賢い口の利き方

しかし、介護サービスを利用しようとしても、姑が従わないこともあるのではないだろうか。

「私が担当した利用者さんには、そのハードルをうまく越えた方がいます。その方のお姑さんは、お嫁さんの言うことすべてに逆らうんだそうです。だから、『介護サービスを利用しましょう』と言っても拒絶されることは目に見えている。そこで、一計を案じ、『ケアマネさんからホームヘルパーを勧められたんですが、お義母さんはどうせ受け入れないでしょうから断っておきました』とか、『デイサービスはお義母さんには耐えられないでしょうね』などと逆の言い方をした。そうしたら、すぐに、利用するからと言い出したそうです」(Yさん)

嫁が姑を介護するケースでは、こうした心理戦も必要なのです。

また、夫も介護をきっかけに長年連れ添った妻と険悪な関係になるのは避けたいはずです。離婚といった事態を招かないためには、妻の精神的肉体的なつらさを理解するように努め、少しでも自分で介護をする、それができなければ、せめてねぎらいの言葉をかけるということをすべきだとYさんは言います。

「それと兄弟姉妹など親族に介護の現状を知らせることもご主人がすべきことです。お嫁さんは、親族の目や言動がかなりプレッシャーになり、ストレスにもなるんです。介護がきっかけで親族間がいがみ合うことも少なくありません。だから、ご主人は要介護者の状態を伝える時に、『妻が頑張ってくれているから助かるよ』といったひと言を加えてほしいですね」(Yさん)

親に要介護になったときに「すぐするべきこと」

今回、Yさんを取材している際、隣にいた男性ケアマネのSさんが最後にこうつけ加えました。

「介護は突然始まることが多く、親族の中でも親元の近くに住む人、発言力の弱い人、そしてお嫁さんがなんとなく担い手になってしまいがちです。そうしたコミュニケーション不足がトラブルを招いてしまう。ですから、介護が始まったら、できるだけ早い時期に親族が集まって、介護の役割分担などを話し合ってほしい。その話し合いも、発言力のある人の都合で話が進んでしまうことが多いので、介護の担い手として比重が重くなりそうな人、お嫁さんなどが中心に語り合えるような配慮も必要です」

親が要介護状態になったら、慌てずに親族会議。その際、お金のことでもめるのを回避するため介護の費用負担の話も忘れてはいけない、とSさんはこう続けます。

「お嫁さんには、相続権がないにもかかわらず介護をさせられるという不満が大きいんです。ちょっと言いづらいかもしれませんが、お嫁さんに介護をしてもらう分、費用面は親族が持つ、といった発言があれば、お嫁さんの気持ちも少しは救われるはずです」

 

関連記事
笑わぬ老親の介護 なぜイライラするか?
老父と女性ケアマネの間の「トラブル」
もし「親を捨てる」と、幸せになるか?
介護離職拍車か 軽度介護者の援助中止へ
介護離職 親の年金で暮らすと後が絶望的