身体が温まると、次は基本のステップ「ジンガ」。腰を下げ、足を大きく開き、腕で顔を防御しながら左右にステップを踏む。これは難なくクリア。次は蹴りの練習だ。両手を地面につき、足をぐるんと大きく回して元のポーズに戻る。じんわり汗をかいてきた。すると……。

「はい、次は側転です」

ジョーゴ(組手)に挑戦。右が筆者。一応、足を上げて蹴っているつもり。

ええー? できるのか!? 最後にやったのはいつだろうと考えたが、おそらく20年以上前だろう。でもみんなはクルクルやっている。しかし、私は私。「中年は無理しちゃいかん」と戒め、1回目は“側転のようなもの”で許してもらった。が……人間、見ているとやれそうに思えてくるもの。2回目は思い切ってやってしまった。できた! 慣れてくると、二人一組で向かい合い、基本ステップを踏みながら、蹴りや避け(側転など)を実践。汗だらだら。ついていくだけで必死だ。すると……。

「はい、じゃあ次は逆立ちです」

まじっすか! 遠い記憶をたぐりよせても、いつ最後に逆立ちしたのか覚えてない。25年以上やってないんじゃないか。でもやるしかない。えいやっ。クリア! 次。

「逆立ちして、足を壁で支えて歩いてください」

目がテン。しかし、生徒さんたちは当たり前のようにどんどんやっていく。私は、逆立ちはしてみたものの、腕がぷるぷるして一歩も動かない……。先生、無理っす。

「はい、じゃあ次はブリッジ!」

こ、腰が……。

ハードな全身運動ができるカポエイラ

数々の“基本ステップと技”をおさらいすると、最後はジョーゴという組み手に移った。これがまさにカポエイラの醍醐味。先生がビリンバウを手にすると、さっと生徒さんたちが楽器を持って円になった。音楽が始まると、全員が手拍子を打ち、ポルトガル語で歌を歌い始める。私も適当に声を出してみる。気持ちいい!

円の中で、これまで習った技をすべて使いながらの組み手がスタートした。代わる代わる選手が交代し、演奏する人もクルクル代わる。全員が歌えて叩けて戦える“マルチプレーヤー”なのだ。

ジョーゴを一通り終えると、今日のクラスは和やかに終了。すでに太ももがパンパンだった。フラフラしつつも、気分はどこかハイテンション……。しかし、一見楽しそうなカポエイラがこんなにハードだったとは。上下左右の激しい動きに加え、身体が浮いたり、頭がひっくりかえったり、運動量がハンパない。

クラスの女性たちが着替えて控室から出てくると、どこからどう見ても美しいビジネスウーマンたちだ。まさか彼女たちがさっきまで側転したり、逆立ちしたりしていたとは……人は見かけによらない。痛くも荒っぽくもないけれど、ハードな全身運動ができるカポエイラ。最大の魅力はとにかく明るく楽しい雰囲気。これを続けられたら、かなりの体力がつく、と確信した。

【教室情報】
コハダン・ジ・コンタス日本支部(CCJカポエイラ)
http://www.cordao-de-contas.org/category/news/
宇佐美里圭(うさみ・りか)
1979年、東京都生まれ。ライター、編集者。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルーにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。中南米音楽誌、「週刊朝日」編集部、「アサヒカメラ」編集部などで働く。朝日新聞デジタルで、「島めぐり」、「おいしいゲストハウス」、「東京の外国ごはん」、「ワインとごはんの方程式」等を連載中。ウートピにてフォトエッセイ連載「Viva Photodays!」を執筆。旅とワインが好き。心はラテン、働き方はまだ日本人
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