ユネスコの無形文化遺産にも登録されたブラジルの格闘技カポエイラ。まさに戦う文化遺産だ。一見すると踊っているかのように見えるのだが、目の前には相手がいて、派手な蹴り技の応酬に目を奪われる。女性をひきつけてやまないカポエイラの魅力とは? 運動不足歴10年の女性ライターが、身体を張ってレポートする。

音楽にのって戦うなんて、そんなのあり?

音楽と笑顔が欠かせない。明るい雰囲気もカポエイラの特長だ。

格闘技入門第2回は、2008年にユネスコが認定する無形文化遺産になったブラジルの「カポエイラ」。世界で唯一、音楽にのせて戦う格闘技だ。もともとは植民地時代、奴隷たちが手かせをつけられたまま戦えるよう技術を発展させたという。人の輪の中で戦い、音楽の演奏をつけたのは、看守に見つからないようにするためというのが定説だ。

そういえば昔、私も代々木公園あたりで目にしたことがあった。音楽に合わせて歌ったり手拍子をしたりする中、二人一組が戦っていた。戦うとはいっても、どこか戯れているようにも見え、和気あいあいと楽しそうだった。痛み、苦しみ、忍耐といったようなM的要素が少なそうで、ひそかに「私に一番向いている格闘技かも……」と思っていた。そう、その日までは……。

今回お邪魔したのは、ブラジルカポエイラ協会、コハダン・ジ・コンタス日本支部が開催する目黒学園カルチャースクールのクラス。金曜夜20時から90分のレッスンで、生徒は女性が9割と多い。基本のステップや攻撃、避け、アクロバットなどの技を習い、最後に“ジョーゴ”という組み手で締めるという。

教室に向かうと、若くてステキな先生がニコニコしながら向こうからやって来た。中肉中背なのに、腕から胸の筋肉がすごい。思わず「ジムで鍛えているんですか?」と聞くと、「カポエイラボディです(笑)」との返事。本日の先生、中村理(おさむ)さんは、高校の頃、留学先のハワイでカポエイラに出合い、以後、日本で修練を重ねてきたという。2015年にMestre(メストレ=師範)を取得し、今は東京、千葉を中心にカポエイラを指導している。

ところで、先生は長い弓矢のような棒を携えていた。聞くと、それはカポエイラで使う楽器だそうだ。