「これはビリンバウという楽器です。高音、低音、濁音の3つの音を出します。これがカポエイラのテンポを決めているんです。ビリンバウの音が鳴ると競技スタート。太鼓も手拍子も戦う人も、みんなこれに合わせています。カポエイラが禁止されていた時期は、警察が来るとビリンバウがリズムを変えてみんなに知らせたんですよ」
さらに、バックの中からは、ココナッツのようなもの、小さな網かごのようなもの、石ころなど「魔術で使うの?」というような不思議グッズがどんどん出てきた。ワクワク!
「“ココナッツのようなもの”はヒョウタンをくりぬいたもので、ビリンバウの共鳴器です。“かご”はカシシというもので、木の実などが入った打楽器。石はビリンバウの弦を押さえるのに使います」
ところで、カポエイラには勝ち負けはあるのだろうか?
「そこはグレーゾーンなんですよね。カポエイラは身体を使った会話、コミュニケーションなんです。審判はいません。相手の力量を見極めながら、ギリギリで蹴りを止めたり、当てないようにする。一方的に攻めないのが“いいカポエリスタ”です。またあの人と組みたい、と思われるのが理想ですね」
とはいえ、日本の武道と同じく帯でのレベル分けがあり、昇段制度もしっかりとあるという。クラスの生徒さんの帯の色もいろいろだった。
もしかしてカポエイラってハード?
さて、さっそく体験レッスン開始。まずは入念にストレッチから始める。BGMはカポエイラの曲。なんとなく楽しい。「ウン、ドイス、トレス、クワトロ!」と、カウントもポルトガル語。気分がアガる。
すると突然、先生が言った。
「はい、次は“バナネイリーニャ”。左の肘を膝の内側に寄せて、右腕と頭を前に出し、全体重を肘の上にのせましょう!」
え? いまなんつった? オロオロしていると、周りの人たちはこともなげに地面に這うような体勢で、身体をふわっと持ち上げた。突然のアクロバティックな動きにたじろぐ。が、先生に一つ一つ動きを教えてもらうと、あら不思議。たしかに身体が浮いた。この辺からうっすら気づき始めた。もしかしてカポエイラってハード?