航空会社ではなく金融出身のツートップによる再生が順調にいけば、大手に属さない「第三極」の存在価値が証明される。それは航空市場にさらなる健全な競争をもたらすことを意味する。
この2年の成功のポイントは何ですか――。筆者の問いに対し、佐山の答えは「特別に何かあったわけではない。一つひとつの積み重ね」。市江の答えも、ほとんど佐山と同じだったが、「強いて言うなら」と続けてこう言った。「風通しを意識しました」。
筆者は昨年6月から今年4月にかけて、羽田、福岡、鹿児島の空港支店で取材をしている。
50人近い社員に会ったが、ほとんど全員が会社の将来に希望を持っていることに驚いた。破綻前に大手の子会社から転職してきたある社員は「スカイマークには可能性がある」と話した。
「スカイマークでは飛行機を飛ばすという目的のもとで、ひとつの会社の社員として働くことができる。子会社で働くこととは全然違う。僕は破綻直後も、この会社には未来があると信じていたし、それは今も変わりません」
今年2月、筆者は羽田から福岡に向かうスカイマーク機に搭乗した。機内では、客室乗務員が荷物を棚に上げようとする乗客を手伝っていた。離陸後、ほどほどに冷やされた「キットカット」が配られた。100円のコーヒーサービスがあると聞き、頼んでみると、客室乗務員はコーヒーを笑顔で手渡してくれた。
こうしたサービスは、破綻前のスカイマークにはなかった。西久保愼一前社長の経営方針は「安さ」が最優先で、客室乗務員には一切のサービスを禁じていた。
12年に客席に配られた「サービスコンセプト」には「機内での苦情は一切受け付けない」「不満は消費生活センターへ連絡を」などと明記され、物議をかもした。当時、筆者がスカイマーク機に搭乗したとき、客室乗務員は、無表情で乗客のシートベルトを点検していた。憧れて就いたはずのこの仕事を、この人はどんな思いで働いているのだろうと、心中を察せずにはいられなかった。
それが、現在は客室乗務員に限らず、カウンターでも社員が自然な笑顔で対応している。「笑顔」の概念が、「無駄」から「プライスレスなサービス」へと変化したかのようだ。