50代になると、自分はもうロートルだと思い込んでいる会社員は少なくない。しかし次回で詳しく述べるが、60歳からの人生における自由時間は8万時間もある。これは20歳から働いて60歳まで40年間勤めた総労働時間よりも多い。つまり会社員生活で、若い時は上司の指示を忠実にこなし、中高年になって組織の一線で活躍して、役職定年になって落ち着いて仕事をしてきたすべての労働時間よりも多い自由時間が生まれる。定年後の持ち時間は決して少なくないのだ。イキイキと活躍している定年退職者を見ていると、ふんだんに時間が使えることがとても豊かであると感じるのである。
「終わりよければすべてよし」の理由
そして多くの会社員や定年退職者の話を聞いていて感じるのは、「終わりよければすべてよし」ということだ。先ほど述べたように若い時に華々しく活躍する人も多い。それはそれで素晴らしい。ただ悲しいことに人は若い時の喜びを貯金しておくことはできない。大会社の役員であっても、会社を辞めれば“ただの人”なのである。
一方で、若い時にはそれほど注目されず、中高年になっても不遇な会社生活を送った人でも、定年後が輝けば過去の人生の色彩は一変する。そういう意味では、「人生は後半戦が勝負」なのである。もちろん他人との比較した意味での勝ち負けではなくて、せっかく生まれてきた自らの人生を活かすことができるかどうかの自身に対する勝ち負けである。
人事・キャリアコンサルタント
1979年 京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に、 経営企画、支社長等を経験。勤務と並行して、「働く意味」をテーマに取材・執筆に取り組む。15年3月定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学人間科学部非常勤講師。著書に 『人事部は見ている。』、『サラリーマンは、二度会社を辞める。』、『経理部は見ている。』 (以上、日経プレミアシリーズ)、『働かないオジサンの給与はなぜ高いのか』(新潮新書)、 『左遷論』(中公新書)など多数。17年4月に『定年後-50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)を出版。