定年後も人生が充実している人は、どこが違うのか。人事コンサルタントの楠木新氏は「定年後の人生でつまずく人は、『会社に使われるだけ』になっている。そうした働き方は会社側も望んでいない」とアドバイスする――。
会社と自分自身を対立の構図のなかだけでとらえていると、むしろ会社の都合で「使われる」だけの存在になりがち。大事なのは必殺仕事人のように「演じ分ける」ことだ――。写真はイメージです(写真=iStock.com/EzumeImages)

会社と自分との関係をどう考えるか

いきなりだが、“人生100年時代”を最後までイキイキと過ごし終える自信を、みなさんはおもちだろうか? 高齢化社会や“人生100年時代”というと、医療や年金の問題と捉えられがちであるが、それだけでなくサラリーマンの生き方・働き方にも大きな変化の波が来ている。しかし、そのことを明確に意識している人は多くはない。

漫画の『サザエさん』に登場する磯野波平さんは54歳のサラリーマンという設定だ。いまならどう見ても70代である。朝日新聞に連載を始めた昭和26年当時の日本人の平均寿命は、男性では60歳に届いていない。定年も55歳時代だ。波平さんなら、会社の仕事に邁進しても、翌年には定年を迎え、少しゆっくりすればお迎えが来たはずだ。

いまの55歳といえば、俳優では唐沢寿明、芸人ではダウンタウンである。寿命の延びによって、若々しく生きる期間も長くなっている。現在55歳時点の平均余命を見ても、男性で28年、女性で34年ある(「平成29年簡易生命表」厚生労働省)。人生のパラダイムが完全に変わっているので、当然ながら生き方・働き方も変える必要がある。

現役サラリーマンのみなさんは、勤めている会社と自分自身との関係をどう考えているだろうか? 「労使」という言葉は、サラリーマンが「労働者」であり、会社が「使用者」であることを表す。こうした対立構図で捉えていると、会社の都合で「使われる」だけの存在になりがちだ。

昔からある「宮仕え」「組織の歯車」「社畜」といった呼び名は、会社の言いなりになっているサラリーマンが存在するからこそ、現代用語辞典にまで掲載された。こんな蔑称を甘受していたら、主体的に判断・行動することなどできなくなってしまう。実は、私自身も、40歳をすぎたころまでは会社にぶらさがっていた。そして受け身だけの立場の自分に納得できなかったがために体調がおかしくなり、休職せざるをえなくなった経験がある。