子どもの語彙力向上は親の姿勢がカギ!
では、どうしたら子どもたちの語彙力を強化することができるのだろうか。
子どもたちがことばを獲得する瞬間を考えてみよう。この場合、幼児を例に挙げると分かりやすい。幼児は「誰かに教えこまれる」ことでことばを獲得するのか。そうではない。自分の周囲に飛び交う「なんだかよくわからない音」と「その音が指し示す対象物」を結びつけることで初めて「ああ、なるほどね(とは言わないが)」とひとつひとつのことばを胸に刻んでいくのである。当然、この場合、幼児がその「対象物」を「知りたい」「分かりたい」と興味を抱かねばならないことが前提となる。
子どもがどんなことばに出あうのか。それは周囲にいる大人たちの働きかけ、環境づくり次第である。わたしが指導してきた小学生の中で抜群の語彙力を発揮する子の多くが、小さなころから大人たちに囲まれた環境で育っていることが確たる証である。
子の目線に下りて話しかける必要はない。「大人のことば」を遠慮なく子に投げかけ続けていくことこそが、子が新たな語彙を獲得できる一番の手法ではないか。こう考えると、親子の普段のコミュニケーションのあり方にポイントがありそうだ。
わたしが自身の経営する中学受験専門塾で2年前から始めた「ことばしらべ」を紹介したい。子どもたちがぐんぐんと「語彙」を強化できる効果的な手法である。ことばの意味を辞書で調べさせるだけでなく、必ず例文を作成させるのがポイントだ。
わたしは文章に登場することばをランダムに3語選び、その3語を用いて80字~120字の例文を作らせている(1語だけだと辞書に載っている例文を丸写しするだけだ)。これによって、辞書を引いたりネットで検索したりするだけでは文章を紡ぎ出すことができない。それぞれのことばの連関や意味について時間をかけて熟考し、丁寧に例文を仕上げていくことになる。この「熟考」の時間こそが、子どもたちの語彙を育む大切な一時となる。