子どもたちの語彙不足、読解力低下が進行中

普連土学園の国語科主任・谷田貝学先生は言う。

「もちろん、日本のことわざを知っているにこしたことはないが、わたしは単なる記憶力ではなく、文脈からそのことわざの意味を読み取ってほしいという思いを込めています」

なお、普連土学園のこの問題の受験者平均点は6.23点(10点満点)だったらしい。

同校教頭(国語科)の大井治先生は谷田貝先生のことばに頷きつつ、こんなことを話してくれた。

「最近の子どもたちはことばの意味を深く考えていない気がしますし、わたしからすると『知っていて当然』と思えることばを全然知らないのですよ」

写真はイメージです

そう、中学校の先生方は、子どもたちの語彙力の低下に危機感を抱いた結果、このような入試問題を出題しているのである。

「最近の若者たちの日本語が乱れていて、聞くに堪えない……」

そんなふうに年長者が嘆息を漏らすのはいつの時代でも変わらない。実際、清少納言の『枕草子』では若者に流行することばづかいに眉をひそめ、このままではいかんと警鐘を鳴らしている。

時代とともに言語は変容していく……これは当たり前のことであり、だからこそ、わたしたちは「古文」の読解に四苦八苦するのである。こういう点から考えると、(年長者サイドからみた)若者の日本語の乱れは声高に論難すべきことではない(というより、その批判には何の効力もない)。

しかし、「語彙」という側面にクローズアップすると、由々しき事態が昨今問題になっていることをご存じだろうか。

昨年12月6日付の毎日新聞(『国際学力テスト 語彙不足に警鐘 読解力低下で専門家』)に次のような主旨の記事が掲載された。

「2015年度学習到達度調査(PISA)」(2016年12月発表)では、日本の子どもたちの読解力低下がデータとして示された。東ロボ(東京大学の入試に挑戦した人工知能)を開発している国立情報学研究所教授の新井紀子先生によれば、主語を読み違えたり、助詞の正しい理解ができていなかったりする誤答が目立った。その要因として子どもたちの語彙の不足が考えられると指摘した。

わたしは中学受験専門塾で小学生たちを対象に国語指導をおこなっている。

塾講師として20年以上子どもたちに携わっているのだが、子どもたちの発することばを観察していると、確かに年々語彙が貧困の一途を辿っているように感じられるのである。