鼻の穴に挿入するマスクも
「呼吸らくちんマスク」はだいぶユニークなので、外で着用するには気が引ける、という人もいるだろう。そんな御仁におすすめなのが、バイオインターナショナルが開発・販売している「鼻マスク(ノーズマスク)」シリーズだ。
このマスクの特徴は、鼻の穴に直接、器具を挿入して花粉から身を守ることにある。2001年から開発がスタートし、2008年には現行モデルが完成。その後、改良を重ね、2017年1月に新モデル「ハナラック」を発表した。高性能フィルターが花粉だけではなく、PM2.5、黄砂、粉塵、飛沫ウィルスといった微粒子の侵入も防ぐという。同社のサイトでは「シリーズ累計販売数1000万個突破! 中国・台湾・ロシアでも大人気」と謳われている。
だが、鼻の形や穴の大きさは十人十色。フリーアナウンサーの高橋真麻のような“鼻フック型”もあれば、女優の蒼井優のような“団子型”もある。一体、どのようにしてハナラックの形状を標準化したのだろうか。バイオインターナショナルの東原松秀社長は開発当時をこう振り返る。
「まずは、鼻の穴の大きさと形の平均値を算出することから始めました。歯科技師が使用している型取りを利用して、協力者十数名の鼻の形を計測し、試作型を作成。その後、試着と微調整を数十回繰り返しながら、平均値を割り出して一定の基準を設けたのです。素材の柔らかさも同様の手順で導き出しました。使用感、柔軟性、機能性、コスト……これらのバランスをどう図るかに苦心しましたね」
その他にも、鼻の穴ほどの小さな空間に収まる器具に、さまざまな創意工夫が凝らされている。
「ハナラックは唯一、左右の器具をつなぐ細い帯だけ鼻の穴の外に露出してしまいます。ここをいかに目立たなくするか。また、高性能フィルターを搭載することで、どうしても通気性が劣ってしまうというデメリットが生じてしまうので、これをどう補助するか。そうしたネガティブ要素にも頭を悩ませましたね。左右をつなぐ帯のサイズや調色にこだわったり、通気性確保のために5つの穴を設けたりしたことも、この商品に快適さをもたらしています」
記者が「ハナラック」を装着して歩いてみたところ、挿入時は鼻の穴に違和感を覚えたものの、すぐに慣れてしまった。呼吸も苦しくはなく、普段と変わらずおこなえた。歩行者からの視線を感じることもなかったが、1メートル程度の近距離になると鼻の中に何かを挿入しているのがバレてしまうことが判明。相手が異物に気づいたときの「えっ?」という表情に、若干、気後れしてしまったのも事実である。
利用法としては、オフィスでデスクに向かっているときや外回りの移動中には装着し、会議や商談といった他人の目が集まる場面などでは外しておくのが無難だろう。ただ、取り外す際、鼻水など鼻のなかの汚れが付着していることがままあるので、保管ケースとティッシュを忘れないように注意したい。あと、小マメに水洗いして清潔に保つのも重要だと思われる。
毎年、各メーカーがしのぎを削り、新商品のマスクが世に送り出されている。だが、商品数があまりにも多く、他メーカーとの差別化を図るのはそう簡単ではない。そうしたなか、「呼吸らくちんマスク」や「ハナラック」のような、ユニークで斬新な商品は、消費者にまず“驚き”を与え、探究心や好奇心を刺激してくれる。ニッチを攻めるには、そうした思い切りのよさも必要なのかもしれない。