▼解説
やりたい仕事を選び、志も高かったUさん。やる気が衝突を生み、結果として責任感や信頼感を失ってしまったのは、皮肉な話である。
一方で本人が自覚しているように、順調な人生を送ってきたゆえレールを踏み外せない弱さがある。学歴があるのも、時に善し悪しと言えよう。はたして仕事をするうえで、学歴は必要なのだろうか。
「仕事、学歴の種類にもよりけりです。多くのグローバル大企業は、いわゆる一流大学を出ていなければ、面接すら呼ばれません。はたまた世の中には学歴が通用しない職種もたくさんあります。現実問題として、学歴はいい仕事をするうえで十分条件にはならないけれど、必要条件になることがあるのは事実です。肝心なのは、勇ましく『学歴なんて関係ない!』と軽視しないこと。一方で『学歴があるから俺はできる!』と過信しないことでしょうね」(ムーギー・キムさん)
本人の意思に反して適性のない仕事につけられてしまい、また社内政治の犠牲者的な側面もある、同情の余地の大きい事例です。やりたい仕事の部署に異動できる芽がなければ、社内でのキャリアは見切ったほうがいいでしょう。
ただし、小説で食べていくのは相当狭き道。すぐ独立するかどうかは疑問です。幸い、テレビ局は生放送中に司会者に全裸でドロップキックでもしないかぎり解雇されない、労働者の権利が守られた既得権益産業です。粘れるだけ粘って仕事内容に見合わない高い給料をもらいつつ、作家としてやっていけるのか見極める時間を持つべきでしょう。大きなリスクをとるだけでなく、大きなリスクをとっても生きていけるよう、準備するのが大切なのです。
1977年生まれ。プライベートエクイティファンドで働く傍ら、作家としても活躍。近著『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『一流の育て方』(ダイヤモンド社)がともに大ベストセラーに。