花粉症対策としては無意味な「高価なマスク」

季節モノの商品を店頭といった目立つ場所に置いておくと、それに引き寄せられて客が集まり、つられて店内に足を運んでしまう。そうなると自然に他の商品も目に入り、「そうそう、ボックスティッシュがそろそろ切れそうだったわ」「せっかくだから、鼻炎薬も買っておこう」と“ついで買い”を誘発するのである。別の言い方をするなら、マスクが“撒き餌”として機能し、店内に客をおびき寄せている、といったところか。その結果、客単価が伸び、総じて売上もアップするというわけだ。

「近年では、フィルタを何層にも重ねたりして高い機能性を謳ったマスクや、女性向けにかわいくデザインされたマスクなど、バリエーションも増えました。ただ、その手の付加価値重視のマスクは一般的なマスクに比べて高価ですから、実際のところはそれほど売れません。そうした商品を主に買っていくのは、年収の高そうなサラリーマンや、『大切な子どものために絶対に体調を崩したくないのよね』などと思っている様子の、それなりに生活に余裕のありそうな主婦ですね」

その他、デザイン重視のマスクは「あ、これかわいい」と何も考えずに手に取ってしまう若い女性客が多い、といった話も。

「付加価値重視のマスクを買っていくお客さまは、店からすると少しでも高い商品を選んでくれる“おいしい顧客”ではあります。ただし、口や鼻に花粉が進入するのを防ぐ、という花粉症対策としてのマスクの用途を考えると、付加価値重視のマスクが機能的、性能的に特別優れているわけではありません。というか、一般的なマスクで十分なんですよ」

その上で、加藤氏は売れ筋のマスクについてこう説明する。

「結局、いちばん売れるのはシンプルでスタンダードな白いマスク。30~100枚入って500円程度のものを購入されていく方が多い。決して利益率の高い商品ではありませんが、ついで買いに繋がればひとまずOKなんです」