大胆な比喩で明確に伝える

歴史や伝統文化について聞かれたら、客観的事実を踏まえつつも、説明過多にならないように注意したい。というのも、長い歴史を持つ日本は、伝統文化も奥が深い。専門家でもなければ、事実をもれなく正しく伝えるのは到底不可能だ。

また、聞いているほうにしても、あまり詳しく説明されても理解できるとは限らない。自分が他国の歴史や伝統文化にちょっと興味を持って聞いてみる、という場面を想像してみよう。さらりと一問一答式に答えるほうが、納得してもらいやすい。

その際、ポイントとなるのは、見た目でわかることを、大胆な比喩を用いて明確に伝えること。さらに、相手が体験できる情報を添えてあげると喜ばれる。

たとえば、「銀閣寺はどうして銀箔じゃないの?」という質問。短期滞在の訪日客であれば、こうした目に見える疑問に答えてあげるだけで満足度が上がる。これなら専門的な知識は不要だ。英語で説明するのも、さほど苦労しないだろう。

また、外国人が歴史や伝統文化に興味を持つときは、単に「知りたい」だけでなく「体験したい」という気持ちを伴うことが多い。忍者について聞かれたら、歴史的な成り立ちを説明するのもいいが、「忍者村」があることを教えてあげたほうが、かえって喜ばれるかもしれない。

英語で説明しにくい日本独特の事象については、ひるまず大胆なたとえで言い切ってしまうこと。「神輿=小さな神社」という発想は、我々日本人からすると相当に端折りすぎな印象を受けるかもしれない。しかし、まったく初めて神輿を見た人に説明するには、これぐらいのわかりやすさが求められる。

ところで、歴史や伝統文化に関連して、避けて通れないのが宗教の話題だ。「無宗教」を伝えようとして、外国人に怪訝な顔をされた経験はないだろうか。

信仰心があつい国・地域の人にとって、「無宗教」など考えられないこと。宗教自体の否定と取られてしまうと話がややこしい。あくまで、宗教は大切という相手のロジックに沿うことを忘れないようにしたい。そのうえで神道の説明をすれば、信仰心があつくないとしても納得してもらいやすいだろう。

(大沢尚芳、大泉 裕、柳井一隆=撮影 答えてくれる人:デイビッド・セイン、シーラ・クリフ、江口裕之)
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