出社したら外資系になっていた

「ある日いつも通りに出社したら、会社が外資系になっていたんです」

これは決してジョークでも、英会話教室のCMでもない。首都圏にあるコンサルティング会社に勤めていた岡村行夫氏(34歳/仮名)が、5年前に実際に体験した出来事だ。

「上司から『本日、緊急朝礼を行う』と通達されて、全社員がホールに集められたんです。壇上に取締役が集合していて、社長がこんなスピーチを始めた。『わが社は本日をもって、アメリカに本拠を構えるA社と合併しました』。すると一体どこに隠れていたのか、見知らぬ外国人男性たちがズラリと登場して、『彼らが新しい経営陣です。それに伴い、社内の公用語は英語となります』と言われたんです。それはもう驚きましたよ」その日を境に部署のトップは外国人に代わり、報告書もメールの連絡も、すべて英語でのやり取りを求められるようになった。ビジネス英語が得意ではなかった岡村氏にとって、まさに青天の霹靂だったという。

「現場の経験がいくら豊富でも、語学スキルが足りない人間は重要なプロジェクトから外されたのが辛かったですね。その後は、新しく留学経験のある人材がどんどん採用されたこともあり、社内での立場も厳しくなっていきました」結局、岡村氏は1年後に退職を余儀なくされた。経済のグローバル化が進む現在、「上司が外国人になる日」は、もはや誰にとっても他人事とはいえないのだ。外資系のITシステムメーカーで営業をしている谷川克彦氏(36歳/仮名)は、直属の上司がイギリス人という環境で働いている。大学卒業後にアメリカへ留学し、現地企業でのインターンの経験もある谷川氏は、英語でのコミュニケーション能力には問題ない。だが、イギリス人との“ビジネス文化の違い”に戸惑うことがしばしばあるという。