風通しはいいがシビアさがきつい

「確かに外資系企業は、日本の大企業に比べれば組織の風通しはいい。上司とも気軽に会話できるし、社長がヒラ社員に直接指示を出すケースもあるくらいです。ただ、表面的にはフランクでも、実質的には『上下関係のヒエラルキーは絶対』という風土の企業が多いと思う。上司からの要求やノルマは無茶でも絶対にクリアしなければならないし、下手に逆らえばミスしたときに簡単に切られてしまう。そのシビアさは、一般の日本人にはなかなか馴染めないものがあります」

と語るのは、これまでに9社もの外資系企業に勤めてきたキャリアを持つ筋金入りの“外資系マン”の三谷和弘氏(42歳/仮名)だ。過去の上司にはヨーロッパ人からアジア人まで、様々な国籍の人物がいたようだ。

「グローバル企業の管理職として日本に来るような人物は、本国でも相当なエリートばかり。当然プライドも高いし、これまでの成功体験に絶対の自信を持っているケースが多い。人種差別や他国の文化を否定するような言動はコンプライアンスで厳禁とされていますが、日本独自の習慣やしきたりを非効率的だと密かに馬鹿にする人物もいました。自国式のやり方を押し付けられることもあって、日本人の上司にはない付き合い難さを感じる人も多いはずです。もちろんその逆に、外国人上司を差別することも問題。お互いの国の文化をリスペクトし合うことが、うまく付き合っていくための必須条件でしょうね」

ちなみに、9つもの会社を転々とするのは日本的な感覚では異例だが、外資系企業ではむしろ評価されるポイントだという。

「外資系では、ひとつの会社に長年勤めていると、『モチベーションが低い』と思われます。転職がキャリアアップの手段なので、社員がどんどん入れ替わるんです。ただし、個人主義ゆえに『引き継ぎ』の概念がないので、みんな自分の都合で勝手に辞めていく。すべてゼロからやり直しになるわけで、残された人間は大変ですよ。自分の上司が入れ替わると、部署のカラーも丸ごと塗り替えられますからね」

最後に、冒頭に登場した岡村氏の現在を紹介しておこう。英語力の必要性を痛感した同氏は、退職後にアメリカに留学。その後ヨーロッパに移住して数カ国で働き、現在はイタリアに本拠を持つグローバル企業に勤めているという。語学の習得も、外国文化の吸収も、始めるのに遅すぎるということはないのかもしれない。

(宇佐見利明=撮影)
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