内容は二の次だ!まずは主張せよ

「欧米人と日本人では、根本的に他人の動かし方が違うんです。上司からは『もっとアサーティブネスを持て』とよく言われるんですが、平たく言えば『もっと主張しろ』ということなんです。欧米のビジネス文化では、自分の要求をゴリ押しするのが当たり前。とにかく自己主張をすることがまず重要で、内容の正当性は二の次という面すらあります。日本的な低姿勢さや謙虚さはあまり評価されません。それでも、クライアントの多くは日本企業なわけで、そこはダブルスタンダードになります。社内では肉食系のやり方が、社外では草食系のやり方が求められるというか……。イギリス人上司には理解してもらえないのが辛いところです」同じく外資系のIT企業で働く松山浩二氏(31歳/仮名)は、メンバーがほぼ全員フランス人というチームに所属しており、彼らのマイペースぶりに悩んでいる。

「基本的にラテン系の国民は、あまり長時間働かないんです。私の上司の場合、昼休みは毎日しっかり2時間とって、夕方5時を過ぎたら部署の誰よりも早く帰ります。残業は絶対にしないし、何かと理由を付けては有休では足りないくらい頻繁に休んでいます。もちろんバカンスの時期には1カ月ほど帰国するので、デスクに座っている姿を見つけるのが難しいくらい会社にいない。おかげで、上司の許可や決裁が必要な業務を進めるのが一苦労なんですよ」就業規則が厳しく、長時間労働が美化される風習が根強い日本企業では考えづらいが、「結果さえ出ていれば、仕事のやり方は個々人の裁量に任せる」というスタンスは、外資系企業ではむしろ一般的だという。

「上司からの指示を待つのではなく、『自分で上司を動かすスキル』を磨かないと、フランス人の部下は務まりません(苦笑)。その分、自分のやりやすい方法で仕事ができるので、働きやすい面もあります。責任は自分に返ってくるので、プレッシャーは大きいですけどね」その一方で、松山氏には毎日1時間ほど同僚たちと世間話をする習慣がある。万が一ミスを犯したときに周囲にフォローしてもらうには、日頃からコミュニケーションを密にとっておくことが重要だからだ。いつも黙り込んでいる人間は、「変人」のレッテルが張られてしまい敬遠されるという。上司や同僚の誕生日をレストランで祝い、休日には交代でホームパーティもする。日本企業的な職場の付き合いとは大きな違いがあるようだ。