30歳以上の通学率1.6%は世界で最下位

少子高齢化社会・生涯学習社会における大学は、青年層の教育機関のみならず、成人の学び直しの場としても機能しなければなりません。生涯学習のセンターとしての機能ですが、これから先は、こちらに重点を置く必要があるでしょう。

日本は就学率が高い教育大国といわれますが、それは子どもや青年層に限った話。成人層まで射程を広げると、お寒い状況が見えてきます。

30歳以上の成人のうち、何らかの形で学校に通っている者の比率(通学率)は、日本はわずか1.6%と世界で最下位です(OECD「PIAAC 2012」)。22歳までの就学率は、世界でもトップレベルなのですが……。

青年期までの時期に教育機会が集中している(偏っている)様は、通学率の年齢曲線を描くとよく分かります。図1は、日本とフィンランドの比較です。

日本は「L字」型で、20代後半以降は地を這うようになります。一度学校を出たら、学び(教育)は終了の社会です。対してフィンランドは曲線の傾斜が緩やかで、30代でもおよそ2割(5人に1人)が学校に通っています。曲線の高低の差によって、生涯学習社会の実現度の違いが見て取れます。

むろん学びの形態は、学校に通うこと(通学)だけではありません。わが国では、企業内教育で学んでいる人が多いことでしょう。しかし今後は、企業も体力がなくなり、労働者の自家育成も難しくなるのではないか。

また終身雇用の崩壊により、労働者が自分のスキルを売りにして、複数の組織を渡り歩く時代にもなるでしょう。そうなった時、今の会社だけで通用する「閉じた」スキルではなく、汎用性のあるスキルの習得が求められます。そのためには外部の「第3」の機関で学ぶ必要があり、大学などの高等教育機関が大きな役割を果たすことになります。

今後の社会変化から察するに、大学は「変わる」余地があります。そうでないと生き残れないことは、今回の単純なシミュレーションでも分かることです。

やせ細っていく18歳人口を奪い合うのは見苦しいし、社会にとっても有害です。持てる教育資源を、成人層にも振り向けないといけない。そのことが、教育期と仕事期・引退期の間を自由に往来できる「リカレント教育」の普及に貢献します。「教育期→仕事期→引退期」という直線型ライフコースが、時代にそぐわなくなっているのは明らかです。

大学の役割革新は自己の存続だけでなく、社会にとってもプラスの機能を果たすのは間違いありません。

(図版=舞田敏彦)
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