「東京の清掃員は沖縄の営業マンより年収が高い?」(http://president.jp/articles/-/13843)に引き続き、『年収は住むところで決まる』(エンリコ・モレッティ著)の地域格差についての論考が日本にも当てはまるのかどうか検証していきます。
本書の主張の一つは、特定地域に富が集積する傾向が強まっている、ということですが、それを可視化する図法として、地域別の上位10位と下位10位の平均推移をとっているものがあります。
たとえば大卒者(アメリカ国内)の年収が1980年に比してどれほど伸びたかを、上位10位と下位10位の都市の平均推移で見ると、1980年から2010年にかけて、上位10位の群では2万ドル以上伸びましたが、下位10の群の伸び幅は1万ドルに満たないことがわかるのです。
同じやり方で、都内の中学受験率の地域変化を可視化してみました。早期受験の進行により、中学受験をする子どもが増えているといいますが、それは地域的な偏りがあるのではないか。こういう仮説においてです。
私は、都教委の『公立学校統計調査(進路状況偏)』にあたって、公立小学校卒業生の国・私立中学進学率を、都内の市区町村別に明らかにしました。1980年、1985年、1990年、1995年、2000年、2005年、2010年、2013年のデータです。
各年の地域別データをランキング表にし、上位10位と下位10位の平均を計算しました。2013年の上位10位は、千代田区(40.0%)、文京区(39.7%)、中央区(37.3%)、渋谷区(36.9%)、港区(35.5%)、世田谷区(32.9%)、目黒区(30.3%)、新宿区(29.2%)、豊島区(27.6%)、武蔵野市(27.5%)ですから、これらの平均をとって33.7%となる次第です。
1980年の上位10位の平均値は16.1%でした。よって、この四半世紀ほどにかけて、上位10位の群の平均は17.6ポイント伸びたことになります。図1は、上位10位と下位10位の平均値が、1980年と比してどれだけ伸びたかをグラフにしたものです。