上位10位と下位10位の群の違いが明らかです。むーん、早期受験の進行は都内でも特定地区に集積しているようですね。ちなみに、『年収は住むところで決まる』の中にも、似たような曲線のグラフがしばしば出てきます。
1980年と2013年の国・私立中学進学率地図を地図にしてみましょう(図2)。この30年における、東京の中学受験率地図の変化です。
この期間中、都全体の国・私立中学進学率は7.5%から16.7%へと上昇しましたが、伸び幅は地域によって一様ではありません。色が濃くなっているのは東部の特別区がほとんどで、西の市郡は相変わらず白いままです。
中学受験の進行に地域的な偏りがあることが分かりました。国・私立中学進学率の伸びが大きい地域は、富裕層が多く住んでいる地域であることは言うまでもありません。最近のデータでみると、住民の富裕度と中学受験をする子どもの量は、非常に強く相関しています。図3にみるように、住民税の課税額が高い地域ほど、国・私立中学進学率が高い傾向が明瞭です。相関係数は+0.8278にもなります。大変高い値です。
東大などの有力大学合格者の中に、国・私立校出身者が多いことはよく知られていますが、教育を媒介にした、親から子への富の密輸が強まっていることを示唆するデータでもあります。教育とは、公正・公平な社会移動の手段として機能する面を持っていますが、こうした「見えざる」抜け道が、これから先さらに太くならないとも限りません。教育社会学を専攻する者として、今後も注視していきたいデータです。
1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。武蔵野大学、杏林大学兼任講師。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。主な著書に『教育の使命と実態』『47都道府県の子どもたち』『47都道府県の青年たち』(いずれも武蔵野大学出版会)などがある。