『年収は「住むところ」で決まる』エンリコ・モレッティ著(プレジデント社)

エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる』(プレジデント社)という本が話題になっています。年収といえば、学歴や職業による差が問題にされることが多いのですが、この本は居住地の差に着目しているわけです。曰く、「イノベーション都市の高卒者は、旧来型製造業都市の大卒者より稼いでいる」。

なるほど。私のような地方出身者からすると、分かるような気がします。郷里の鹿児島の大卒者よりも、東京の高卒者のほうが稼いでいるんじゃないか。こういう思いを抱くことがしばしばあります。各人が手にする富量は、性、年齢、学歴、職業といった個人の属性と同時に、居住地によっても大きく影響されているといえるでしょう。

私は、上記の本でいわれていることが、わが国でも当てはまるかを追試してみたくなりました。あいにく、学歴別の年収を地域別に計算することはできませんが、職業別のそれは出すことができます。男性正社員の職業別の平均年収を、都道府県別に明らかにしました。その結果を見ていただきましょう。

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表1 男性ホワイトカラーの年収分布(東京)

資料は、2012年の総務省『就業構造基本調査』です。男性正規職員の職業別の年収分布を、都道府県別に知ることができます。私はこの分布表をもとに、平均年収を計算しました。東京のホワイトカラー職を例に、計算のプロセスを説明します。ホワイトカラー職とは、管理職、専門・技術職、および事務職を合算したカテゴリーです。

年収が判明する、都内の男性ホワイトカラー正社員は約120万人ですが、その年収分布は上表のようです。最も多いのは年収400万円台ですが、1000万超の高給取りも結構います(16.6%)。さすが東京。

この表から平均年収を計算するわけですが、度数分布表から平均を出すやり方はご存じでしょうか。階級値の概念を使うのですよね。年収400万円台の階級は、一律中間の450万円とみなします。500万円台は550万円、600万円台は650万円、というように仮定するのです。上限のない1500万超の階級は、ひとまず2000万円としましょう。

この場合、年収の平均値(averagae)は以下のようにして求められます。全体を100.0とした相対度数(構成比)を使ったほうが計算が楽です。

{(2200×0.2)+(2000×0.2)+……(35100×2.9)}/100.0 ≒ 702.6万円

東京の男性ホワイトカラー正社員の平均年収は、およそ700万円なり。まあ、こんなものでしょう。鹿児島は529万円、沖縄は474万円。うへえ、同じ男性で、同じホワイトカラー正社員でも全然違いますね。