中1からすれば高3は立派な大人
中高一貫校に中学1年生として入学して最初に驚くのは、高校2年生や3年生の先輩たちの迫力だ。中1からしてみるとまるで大人。
ある中高一貫男子校OBは、次のように振り返る。
「中1の春、自分たちはついこの間まで中学受験勉強をしていて、もやしっ子のお坊ちゃんみたいなのに、高2・高3の先輩たちは体格もいいし、ちょいワルっぽい雰囲気もあるし、何がどうなったら数年間でこんなに変化するのだろう、生物学的にこんな進化の仕方があり得るのだろうかとびっくりしました」
同時に、中1の生徒たちは不思議に思う。
「高2・高3の先輩たちは、先生たちよりも体格がいい。先生たちに叱られたって、体力では打ち負かすことができる。先生たちのいいなりにならなくていいはず。なのになぜもっと反抗してみせないのか」
精神的に未熟な中1はそんなふうに感じる。高校生よりもむしろ中2・中3くらいの先輩のほうが、何かにつけて先生に対して生意気な態度をとっている。一見つじつまが合わない。
しかししばらくすると気づく。「中2・中3の先輩は、まさに反抗期なのだな」と。「高2・高3の先輩は、反抗期を乗り越えて、心身ともにほとんど大人になっていて、だからこそ先生たちと大人の付き合いができるようになっているし、先生たちも高2・高3の先輩をほとんど大人扱いしている。それが成長というものなのか」と。
そう考えると、中2・中3の先輩がとたんに幼く、みっともなく見えてくる。いや、もちろん中1のほうが幼いし、自分たちも1年後2年後には同じようにみっともない時期を過ごすのだが、それはあくまでも過渡期の姿であって、最終的には高2・高3の先輩のようなほとんど大人にまで成長してこの学校を卒業するのだと理解する。
その安心感が思春期に安定をもたらす。実際中2・中3になると、無意味なやんちゃやおてんばや、大人を試すようなプチ非行を実行する生徒は増える。しかしほどほどでおさまる。必要以上にいきがっても意味がないと思えるからだ。いつまでもツッパリを気取っているようではむしろかっこ悪いと思えるようになるのだ。
それに、中2・中3で多少いきがってみたところで、上には高校生がいる。このころは、先生よりも先輩に畏怖の念を感じるもの。先生に注意されても突っ張ってみせられるが、先輩には刃向かえない。目に余る行為に対しては、教師の代わりに高校生の先輩がたしなめるということも、中高一貫校ではよくある光景だ。