先生よりも高校生の指導が威力を発揮する
ある女子校では、制服を着崩す中学生に、高校生の先輩が注意することもあるという。「私たち教師がいったらそっぽを向かれてしまうようなことも、先輩にいわれると素直に聞きます」とその女子校の教師は語る。そのほかも、中高一貫校の教師たちは「高校生がいてくれるおかげで助かっている」と口をそろえる。高校生の存在が、中学生のやんちゃに対する適度な抑止力になっているから学校の風紀が乱れにくいというのだ。
中高一貫校、特に名門といわれる学校ほど、自主・自立・自由を標榜する学校が多い。実際、校則は厳しくない。麻布や灘、東大寺学園のように校則がないなんて学校もある。しかし、風紀は乱れない。目に見えない抑止力が働いているのだ。
中等教育は、14~15歳の反抗期のピークを中心とする6年間の曲線的な成長に寄り添う教育だ。その時期の教育の重要性については最近拙著『進路に迷ったら中高一貫校を選びなさい』(ダイヤモンド社)に著した。
それがもし、反抗期のピークで真っ二つに分断されてしまったら、中学1年生は、反抗期真っ盛りの中学3年生を、最高学年として仰ぐことになる。しかし、中学・高校が一緒にあれば、反抗期を乗り越えて、大人としての振る舞いを身につけた高校生の姿を目の当たりにすることができる。
未来の自分から注意を受け、過去の自分に指導できるようになってから卒業する。これこそが、激動の思春期において自律を学ぶ、中高一貫校ならではの学校文化なのだ。
(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)