富裕層向けホテルはまだまだ増える
一方のスターウッド側は、ラグジュアリーホテル市場としての東京をどう見ているのか。
「ラグジュアリーホテルの開発が続く東京でも、都市の規模に比べてまだ集積度は低い」と話すのは、交渉窓口となった同社日本法人の日本スターウッド・ホテルの橋本和宏日本・韓国・グアム地区統括開発部長だ。
「当社にはラグジュアリーコレクションに加え、セントレジス、Wの3つのラグジュアリーブランドがありますが、このすべてを東京につくりたい。東京五輪開催後の需要の落ち込み懸念もありますが、成熟した観光先進国と違って、日本のインバウンドはまだこれからが成長段階。十分にカバーできるでしょう。日本ほど多様な観光の魅力があり、安全で、清潔な国はほかにないと思います」
東京は02年から外資系高級ホテルの進出ブームが続き、14年にはハイアット系の「アンダーズ東京」とアマンリゾーツの「アマン東京」という話題性の大きなラグジュアリーブランドが立て続けに開業した。
その勢いはまだ終息していない。18年初めには、朝日新聞社が銀座で開発中の「銀座朝日ビル(仮称)」に「ハイアットセントリック銀座東京」(164室)が、三井不動産が大手町に建設中のビル上層階にはフォーシーズンズホテル(名称未定・約190室)が20年に開業予定だ。
そうした外資系の攻勢に対し、国内系老舗では「パレスホテル東京」が12年に全面建て替えによって大幅なグレードアップを果たし、ホテルオークラ東京も19年春の完成予定で本館を建て替え中。この7月には、星野リゾートが手掛ける「星のや東京」も開業した。日本を代表するビジネスエリア・大手町に立つ、日本旅館スタイルの超高級ホテルという独特の立ち位置で、客室料金は7万8000円からと強気だ。
東京のホテルはいま、ラグジュアリークラスか、高付加価値型のビジネスホテルのどちらかに開発が集中している。富裕層向けの小型のラグジュアリー路線で高単価を維持するか、マンパワーを絞って施設グレードで勝負する宿泊特化型に徹するか。その中間の一般的なシティホテルの開発は目下、フリーズ状態にある。
ただし、この3~4年上昇を続けてきた高級ホテルの客室単価も、そろそろ天井感が漂いはじめている。供給量の急拡大や円高傾向によるものと思われる。新しい競争相手が続々と登場してくるなか、決して楽観してはいられない。