提携したら“棚ぼた”も!?

スターウッドの代表的なブランドで2015年の全世界・全施設の平均客室単価を見ると、ウェスティン188USドル、シェラトン150USドル。これに対してラグジュアリーコレクションは316USドルと、同ブランドがいかに高単価かがわかる。

「宿泊客全体の60~70%を欧米とアジアからの外国人客とする計画です。インバウンド旅行は為替変動の影響を受けやすいのですが、富裕層はリスクが比較的小さい。ラグジュアリーコレクションの顧客に加えて、自社の海外営業所9カ所、そして自社会員組織の西武プリンスクラブ(会員数約80万人)のネットワークをフル活用し、東京のラグジュアリーホテル市場での勝ち組を目指します。客室稼働率は通年稼働する17年で70%、18年で80%を目標としています」と、プリンスホテルの赤坂茂好社長は熱弁する。

プリンスホテル社長 赤坂茂好氏

同社にとってシティホテルの新規開業は05年開業の「ザ・プリンスパークタワー東京」(芝公園)以来、じつに11年ぶり。グループの頂点に位置するホテルでもあり、経営トップの思い入れもひとしおだ。

「ラグジュアリートラベルは、パッケージとしていかに旅行の魅力を高めることができるかがカギ。新規開業やリニューアルを進めている箱根、軽井沢、川奈などのリゾートホテル、レジャー事業との密な連携によって、日本ならではの訴求力の高い旅行プランを提案していきます」(赤坂社長)

主要ホテルに宴会施設を多く抱えるプリンスホテルは長年、稼働対策として国内外のMICE(ミーティング・インセンティブツアー・コンベンション・エキシビション)の市場開拓に取り組んできた。そして同社の海外戦略はこの数年、外資系ホテル企業との業務提携を鮮明にする。インバウンド市場が急拡大したことで、海外での知名度アップが欠かせなくなってきたからだ。

13年には「ザ・プリンスさくらタワー東京」を大規模改装、それを機にマリオットの高級ブランドである「オートグラフ コレクション」に加盟した。12年度に17%だった外国人客比率は、加盟後の15年度に44%に増加、提携のメリットを享受した。この成功体験も、スターウッドとの提携の呼び水となった。

また、タイ・バンコクを本拠に、高級ホテルチェーンをアジアと中東地域で展開するデュシットインターナショナルや、中国の名門である上海錦江国際酒店グループともマーケティング提携を結ぶ。旧西武時代には見られなかった急速なグローバル化は、新生・西武HDを象徴する動きといえるだろう。

スターウッドとの提携では、交渉と同時並行的に、マリオットによるスターウッドの買収話が進展。現在、両社は基本合意のうえ手続きを進めている最中だ。正式に決まれば、全世界で合計5500軒・110万室の超巨大ホテルネットワークが誕生し、会員数の単純合計は7500万人(マリオット5400万人・スターウッド2100万人)に達する。プリンスホテルにとってこの買収劇は、大きな“棚ぼた”といえる。