お1人様セレブにも配慮

ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町の主要施設は、オフィスおよび商業施設との複合ビル「紀尾井タワー」の30~36階に入る。ロビーは最上階の36階。エレベーターを降りて通路を進むと、ホテルの顔である「スカイ ギャラリー ラウンジ レヴィータ」の2フロア(35・36階)吹き抜けの壮大な空間が広がる。ラウンジのバーカウンターのバックは、2階層分の総ガラス張り。壮麗な夜景を眺めながら傾ける1杯は格別だ。

西武グループは過去、外国企業をホテルの設計に参加させることはなかったが、今回初めてホテルのインテリアデザインで、ロックウェル・グループ・ヨーロッパ社を起用した。世界各地で高級ホテル&リゾートのインテリアデザインを数多く担当する気鋭の企業だ。「Levitation=浮揚感」を基本コンセプトとするホテルデザインは、いろいろなインテリア要素が“天空に浮かぶ”イメージで構成されている。35階のラウンジはその象徴といえる。

客室は、窓が天井から床近くまでのフルスケールのガラス張りとなっているが、その窓際には、横になって眺望を楽しむためのデイベッドが置かれている。バスルームは、高級タイプの客室では独立型のビューバスを、一般タイプでは窓からの外光がふんだんに入るシースルー型のバスユニット(ガラス壁面は浴室内側のスイッチで不透明にできる)を採用する。

メインダイニングは和食だ。ただし従来の会席路線ではない。冷蔵ワゴンで厳選素材をテーブルにまで運び、ゲストが好みの食材をチョイスするアラカルトスタイルが中心。単身で宿泊し、早めに食事を切り上げたいビジネスエグゼクティブ客のニーズを反映したものだという。

赤坂プリンス クラシックハウスは、今回のリニューアルを機に1930年の建設当時の姿に主要部分が復元された。カジュアルフレンチレストラン、バー、大小の宴会場、多目的ホール、そして中庭で構成するが、タワー内の本館の現代的なデザインとは異なり、クラシカルでオーセンティックな雰囲気が売りもの。根強いファンが多かったバー「ナポレオン」は以前の面影を残している。

「富裕層をターゲットとし、外国人客比率の目標が60~70%ですから、当然スタッフのスキルもそれにふさわしいものでなければならない。語学レベルやVIP対応など選りすぐりのスタッフを集め、1日中、英語だけで過ごすトレーニングもずいぶん重ねました。接遇研修トレーニングのほか、調理スタッフはニューヨークの3つ星レストランで研修を積み、先端的な料理トレンドを学んでいます」と、開業準備室長としてホテルを船出に導いた大森伸翁総支配人が言う。

微に入り細を穿つ接遇の力量は、富裕層やVIPを受け入れるホテルとしては生命線だ。ヒューマンリソースに留まらず、最近ではIT技術によるサポート分野が増えている。このホテルでも全客室に置かれたタブレット端末を介した「ルームマネジメントシステム」と呼ばれる最新のソリューションが導入されている。

端末ではルームサービスのオーダー、ホテル内のレストラン予約、メールによる各種のリクエストができるほか、空調、照明、カーテンの開け閉め、観光案内、館内施設案内などの機能がある。これらの操作内容のうち、空調や照明の設定、リクエスト内容などは自動的にホテルの基幹システムに蓄積され、それが次回来館時のルームメイクなどに反映される。「使えば使うほど自分好みのホテルになっていくシステム」(大森総支配人)というわけだ。近いうち、グループの他ホテルとも、履歴を共有するシステムを構築していくのだという。

(左)スカイ ギャラリー ラウンジ レヴィータは、35~36階の吹き抜け。巨大な窓からの眺望は圧巻。(右上段)1泊25万円のデザイナーズスイートルーム。窓際のデイベッドに座れば、空に浮いている感覚に。(右中段)浴槽につかりながら、夜景を楽しめる。(右下段)左・婚礼をはじめとしたパーティ会場として使える、赤坂プリンス クラシックハウスのバンケット。右・開業準備の指揮を執った、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町 総支配人の大森伸翁氏