小池知事の応援にもかかわらず「逃げた」票

そうした幾多のトラブルゆえか、鈴木氏の得票は4万7141票にとどまった。もっとも2012年と2014年の衆院選で民主党の江端氏が獲得した4万7493票、4万4123票とほぼ同じに見えるが、この時は共産党が候補を擁立しているため、共産票は含まれない。鈴木氏は「2万票余りある」と言われる共産票を含んだ上での数字である。

23日の投開票日の夜、落選が決まった鈴木氏は頭を丸めて現れた。東京10区と福岡6区で敗退した民進党は、馬淵選対委員長の名前で文書を出したが、蓮舫氏はコメントすら出していない。

では当確が打たれた午後8時ちょうどに、池袋駅前の選対事務所に喜びいっぱいで現れた若狭氏の勝利はどう評価すべきか。

自民党公認で公明党推薦の若狭氏が獲得したのは7万5755票だが、実はこれは東京都知事選で当選した小池氏と自民党と公明党が推薦した増田寛也氏の得票数を合わせた数よりも少ないのだ。もちろん投票率は知事選が59.77%だったのに対し、衆院補選は34.85%と低かったのも一因となっている。

しかし票の絶対数を見れば、都知事選では小池氏か増田氏に投票した人のかなりの数が、衆院選補選では若狭氏に投票していない。人気絶頂の小池知事が12日間の選挙戦で8日も応援に入ったのにもかかわらず、なぜ彼らは逃げたのか。

その予兆は投開票日の前日に見ることができた。若狭氏は「最後の訴え」を池袋駅前の広場で行った。20日に野党6党が行った「市民と野党の共同候補鈴木ようすけ応援街頭演説会」(ただし本人抜き)のまさに同じ現場である。

この時に集まった人たちは20日の野党合同街宣のおよそ6割で、小池知事を警備するために広場全体に配置されていたSPは、やや手持ち無沙汰の様子だった。その前に練馬で行われた最後の街宣に集まったのは80人だったという。たとえ組織的動員をかけていなかったとしても、FBなどで告知は行われていたので、その数はいかにも少なく思える。

勝利の女神・ニケはいち早く勝ちを知らせるために翼を持つが、その翼でまた別の場所に飛び去ってゆく。誰もその甘い余韻に永らく浸ることは許されない。

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