現職の小池百合子さんと前参議院議員の蓮舫さんへの男性からの支持は各3割なのに対し、女性の支持は小池さんが4割あまり、蓮舫さんが約3割――。都知事選の投開票が7月7日に迫る中、このような調査結果が報じられた(JNNによる電話調査、6月29~30日)。
なぜ、小池さんは女性ウケがいいのか。
彼女は学歴詐称疑惑を抱えるとともに、公約も7つのゼロ化未達成で不履行も多いといった声もある。反小池派はこれを攻撃材料としているが、総じて女性有権者はそれらをあまり気にしていないように見える。
理由は大きく2つある。まず、「女性は学歴社会で生きていない」ということだ。もうひとつは女性が共感できる政策を一定程度実行したことへの評価があるからということだ。2つの理由の背景にあるものを順番に解説しよう。
学歴詐称疑惑に無関心な女性たち
小池さんは過去に何度も学歴詐称疑惑を指摘されている。この質問を受けるとき、彼女は「またですか?」といらだちを隠さない。そうした言動に反発するのは主に男性ではないか。もちろん、学歴にウソを書いてはいけない。だが、そんなに毎回大騒ぎすることなのかどうか。
筆者の母親(76歳)は先日、言っていた。
「だって、小池さんがカイロ大学を出ているかどうかって都知事の仕事をするのに関係ないじゃない」
まあ、その通りだよな、と思う。ネット上でも、「どんな噂があれ、大学が証明しているのだから問題ない」「失政がないから、こうした批判材料を探してくるのだろう」といった声が少なくない。ところが、学歴に固執する人々がいる。批判を覚悟で言うが、中高年の男性だ。なぜ彼らは学歴にうるさいのか。
学歴社会の男社会
日本社会は昔も今も学歴社会である。かつて霞が関では、「東大法学部出身」は当たり前で、「どこ出身?」というのは、あくまでも「どこのゼミ出身か?」という質問だ。趣旨を理解せず質問に東大以外の大学名を答えた瞬間、苦笑されるという話もあった。
ジェンダーギャップ指数118位の「ザ・男社会」の日本で、世に働く男性にとって学歴というのはとても重要なものなのだろう。事実、戦後の日本の経済成長を支えたのは、戦中・戦後と教育を受けることができなかった親の子ども達、いわゆる団塊の世代である。
団塊の世代は平和の中で学びを得、いい大学に入った者は経済成長を支える大手企業に入ることで、いい給与といい年金を保障され、一生が安泰であった。そして、その子ども達もまた、学歴で大手企業に入れるかどうかが決まった団塊ジュニアたちだ。
企業のエントリーシートに大学名を書かなくなった現代でも、学生間では企業がどこ大学出身かわかる仕組みがあるらしいとまことしやかに言われる。就活が終わって蓋を開けて見れば、結局、大手企業はみな高学歴出身者ばかりだからだ。
そうした“学歴バカ”もしくは“学歴コンプレックス”の男性が小池さんを執拗に叩いているのではないか。では、女性は学歴をどう考えているのか。
戦後の日本経済の原動力は、朝から晩まで働く猛烈サラリーマン。そして夫を支え、子育てや介護といった家庭での仕事を無償でおこなってきた専業主婦の妻だちだ。専業主婦世帯と共働き世帯数が逆転したのは1997年である。そう遠い昔話ではない。
結婚・出産時に仕事を辞め、子どもが小学校、中学校になったら働くいわゆる「M字カーブ」は解消されつつあるが、30歳を超えると一気に正社員率が下がる「L字カーブ」は現代の女性の働き方を示している。
そのため、男性が家計の多くを担い、女性はパートや契約社員として家計を支えるという構図が続いている。高学歴の女性でも、途中で仕事を辞め家庭に入って、子育てや介護を担いながらフレキシブルに働ける非正規雇用での働き方を選択する人は現在でもとても多い。女性にとって、学歴は必ずしも自分を“高見え”させてくれるものではなかったのだ。