意外な反応を示した新日石

相手によって資料を使い分ける。そのためには、相手のタイプを知り、過去にどのような企画書を通し、どういう資料をボツにしたかを確認しなければならない。「取引したい相手方企業の中に、そういうことを教えてくれる味方をつくるのがコツ」と出雲社長は語る。

伊藤忠の出資決定後、取引先数は飛躍的に拡大。日立製作所、新日本石油(現・JX日鉱日石エネルギー)と、立て続けに大手企業からの出資が決まった。

これまで多くの失敗を重ねてきた出雲氏だが、その経験から「資料を作るときはある程度決め打ちして、精度を高めるのが常道だと思いますが、デメリットもけっこう多い」と言う。

新日本石油との交渉の際、バイオ燃料に興味があるだろうとその説明を熱心にした。すると意外な反応が返ってきた。

「ミドリムシにはこんなにビタミンが含まれていると話したんです。そこに非常に興味を持ってもらい、『うちの食堂で売ってみようか』と言われました」

企業のベンチャー投資は、本業以外のところで考えているケースも多い。エネルギー関連の企業だからといって、そこばかりをアピールする資料は、かえって相手に響かないこともある。

「1回目の面談ではほとんど資料を使わないこともあります。ミドリムシのどこに興味があって、きょう会ってもらえたのかをお聞きするほうが、相手のニーズに合わせられる。そうしないとチャンスも広がりません」

「この資料なら絶対相手にアピールできる」という先入観を持ちすぎると、伝わる資料にならない。最初の面談は“資料半分”くらいの姿勢で臨むのが出雲社長のモットーだ。