実はこれらのマチウの思考は、特別なものではない。
「人間が幸福であるため、すぐにどこでも実行できるのは利他の精神というのは仏教の教え。ただし彼はチベット仏教僧という無一物の立場で、自分の信じること、利他に全身全霊を傾け、迷わず人生を生きているのが素晴らしい。どの時代でもどの地域でも、仏教は本来、彼のような生き方を目指しているんです」(今枝氏)
幸福はすべての人の頭の中にある。しかしそれを感じられるかどうかは、本人の姿勢次第なのだろう。
世界一幸福になるための3冊
マチウ・リカール(評言社)
「幸福は習得可能な技術である」という考えのもと、科学的な実験結果や仏教的見地など多角度から幸福を検証する。「はじめに」ではマチウの詳しいプロフィールがわかり、最後には本文で引用した「瞑想の実践」が掲載されている。
ジャン=フランソワ・ルヴェル+マチウ・リカール(新評論)
フランスを代表する無神論哲学者の父親と、科学対宗教、キリスト教対仏教、西洋対東洋といった視点で白熱した議論が行われる。フランスでベストセラーになり、21カ国語に翻訳された。この本によって同国でマチウは有名人に。
ダライラマ(トランスビュー)
年齢、職業、境遇など、50のカテゴリーの人に向けた、ダライ・ラマによる助言集。マチウは聞き手として参加している。「敵であれ友達であれ、他人のことを気づかおう。それが本当の慈悲の基礎である」の教えは、当然マチウに通じる。