水原氏の報道を見て、私は動悸が止まらなくなった
3月21日(日本時間)朝、ロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手の専属通訳である水原一平氏が、違法賭博疑惑により解雇されたと報道された。水原氏はスポーツ賭博で作った450万ドル(約6億8000万円)の借金を、大谷選手の口座から返済したという。同氏は、最初は大谷選手が水原氏の状況に理解を示して借金を肩代わりしたと発言したが、のちに「翔平は何も知らなかった」と回答を一転させた。
そして26日、大谷選手がドジャースタジアムにて記者会見を開き、自身の関与を完全否定。「僕自身は何かに賭けたりとか、誰かにかわってスポーツイベントに賭けたり、それを頼んだりしたことはないし、僕の口座から誰かに送金を依頼したこともない。数日前まで彼がそういったことをしていたというのも全く知らなかった」と断言した。
この会見を見た筆者は、大谷選手の口から繰り返し「嘘」というキーワードが出たことや、水原氏が大谷選手の代理人に対して当初「友人の借金の肩代わり」と説明していたことを知り、動悸が止まらなくなった。「全く知らなかった」と話す大谷選手が、かつての自分と重なったからだ。
この記事では、水原氏の証言や大谷選手が会見で語った内容の真偽についてではなく、あの会見がギャンブル依存症の人を知る者にとって真実味を帯びていたことについて語る。また、ここに書いたのは、筆者が経験したケースであることと、ぼやかした表現を使っていることを前置きしておく。
それまでの日常が、一瞬で崩壊した
平穏だった日常が一転したのは、信頼していたAさんの突然の告白がきっかけだった。もともと彼が競馬にハマっていたことは知っていたが、まさか給料や貯蓄まで使い果たし、消費者金融に借入しているとは想像もしていなかった。普段は明るく社交的で、人を喜ばせることを第一に考えて行動していた彼は、周囲から尊敬される存在だった。
私も困ったことがあるとAさんに意見を求めたり、話を聞いてもらっていた。いつでも面倒見がよく、金に困っている様子は微塵も感じられなかった。肩を落とし、頭を下げるAさんは、私の知っているAさんではなかった。
その時点で、Aさんはすでにご家族から幾度となく借金を肩代わりしてもらっていたらしい。「次はもうやらない」という約束を交わしていたが、Aさんは借金がなくなると再び競馬場に戻ったそうだ。
私は、Aさんがギャンブルを続けるのは、彼の意志の弱さや、ギャンブル仲間に原因があるのだろうと考えた。そして、私に相談するということは、信頼して助けを求めているのだろうと勘違いした。彼がギャンブル依存症であり、それが脳を変形させてしまうほどの精神疾患であるとは、想像もしていなかった。
私は、Aさんが私をとても可愛がり、大切にしてくれているのを知っていた。私なら彼をギャンブルから遠ざけられるのではないかと思い上がった。