利他の愛に包まれ幸福になる思考法

実験によって、「利他の愛と思いやり」の感情で瞑想すれば脳内の幸福度が上がることがわかった。そしてこれは修行経験者だけができる行為かといえば、そうではない。一般人でも繰り返し行っていると、脳内の回路が変化し、肯定的な感情が定着しやすくなるのだ。やり方のヒントが、マチウの著書『幸福の探求』と、実験を報告した書籍『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』に示されているので、紹介しよう。

利他的になる最初の方法として、マチウは他人と立場を入れ替えることを挙げる。他人の目で自分の自我を見つめ、いかに自分が利己的で傲慢な人間か客観視するのだ。

そしてもうひとつの方法が、愛している人がひどい境遇にいる場面を想像すること。たとえば、母親が狩人に追われる雌鹿だと考える。そして骨を折って、狩人にとどめの一撃を加えられようというとき、自分に向かって助けを求めてくる。すると無力感を覚え、愛する人を慈しむ力強い感情が生まれるという。さらに「その人の苦しみを和らげて、苦しみの原因を何とか取り除いてあげたい、という望みが湧くものである。こうした思いやりの気持ちが心一杯に広がったら、そこにしばらく留まるといい」。

また息を吸うとき、心が光り輝くボールだと考え、それが灰色の雲となって、人々の病、混乱、心の毒を引き受けるイメージも推奨。こうした他者の苦しみを背負う思考によって、「執着も固執も一切伴わず、この上ない幸福を感じる」とマチウは強調する。

瞑想は幸福感を得るだけでなく、感情をコントロールする手段としても使える。たとえば感情に打ち負かされそうなときには、巨大な波が渦巻く嵐の海で、自分の船が沈没しかけて死にそうな光景を空想。そして同じ場面を上空の飛行機から眺め、ほとんど動きがない海面を思い描くと、怒りや執着の大波は「心がつくりだした虚構にすぎず、浮かんでもやがては消える」と思えて、感情の波が落ち着くという。