地方創生を否定する東京一極集中という愚論

驚かされるのは、地方創生よりも東京一極集中を推進すべし、という論者がいることだ。彼らは、東京一極集中しないと上海などとの都市間競争におくれをとると主張する。私から言わせれば、そもそも競争相手の設定が間違っている。上海は中国という国家の経済中心地に過ぎない。東京も現状では日本の中心であるだけだ。国際競争のライバルは、金融ならシンガポールや香港、ロンドン、フランクフルト、ニューヨーク。ITならシリコンバレーだ。

シンガポールの人口は、外国人居住者を入れても600万人。一方、東京圏にはすでに3500万人もいる。人口が大きいほど勝つというのなら東京は6倍勝っていないとおかしいが、現状は負けている。そもそも東京は、2位以下に2倍の差をつけた世界最大の都市なのだ。そこにもっと人口を集中させるとは21世紀の大砲巨艦主義、アホかって話です。

ニューヨークですら都市圏人口は2500万人。でもそのニューヨークが、超広域でも人口500万人のシリコンバレーに産業のイノベーションで勝っているわけではない。自動車産業でいうと、デトロイトが300万人なのに対し、豊田市の人口は40万人と約1/8に過ぎないが、今や豊田市が圧倒的に勝っている。東京一極集中論者は、都市間競争の意味がまったくわかっていないのではないか。彼らが言っているのは「東京に人口が集まれば、都市のGDPが大きくなる」ってだけ。それだけなら、いずれ中国やインド(の都市)が勝つでしょ、って話です。

都市間競争を勝ち抜くために肝心なのは、人口一人当たりの価値をあげること。どれだけ国際的なネットワークを持ちイノベーティブな人材を擁するか、質が重要で数は関係ない。私から言わせれば、競争力は数だと主張する論者が学者でいられることが信じられない。