実際、パーソンズ氏自身もビジネスの収益化に苦労した時期があった。ソフトウエア販売会社を6400万ドル(現在のレートで約65億円)で売却して、その資金を元手に97年にインターネットのドメイン登録会社を立ち上げた際は、ビジネスがなかなか軌道に乗らず、わずか4年で事業資金が600万ドル(約6億円)まで目減りした。このときは「破綻」という二文字が脳裏をよぎったという。

ただ、その際にも目先の収益に一喜一憂するのではなく、最悪のシチュエーションを想定して、それをしっかりと受け入れることで乗り越えた。

この考え方は、パーソンズ氏のビジネス観というよりも、人生観そのものに基づいている。彼はハイスクール卒業後、海軍に入ってベトナム戦争に赴いているのだ。

「私はベトナムで、『少なくともその日だけは生き残れるようにしよう』と毎日を過ごしていました。ビジネスが破綻するかもしれないと考えたとき、ベトナム時代のことを教訓にしました。『最悪なのはお金を失うことではない』と。すると01年にドットコムバブルが崩壊し、それがきっかけで会社が急発展を遂げたのです」

そして11年にGoDaddy社の所有株式の一部を売却し、巨額の売却益を手にしたパーソンズ氏は、不動産事業、オートバイ・ディーラーなどの経営を行いながら、13年にゴルフクラブの開発にも乗り出したのである。

資金は十分にあり、最高級の素材を使って、最良の製品を作ること以外に制約がない中で、ベテラン技術者たちは何度も試作を重ねた。一方で、ゴルフメーカーは各社が持つ特許でがんじがらめになり、よい製品を作りたくとも作れないという業界の常識があった。

「当時、周囲からは『そんなクラブは絶対に作れないよ』『クレイジーだよ』と口ぐちに言われました。でも、クレイジーというのは、時にはいいことだと思います。ビジネスで成功している人の中には、クレイジーな人がかなりいます」と豪快に笑う。