彼の仕事は「フィールド・マツリスト」。

イノベーションのマネジメントではなくて、イノベーション行動のマネジメントを本気で行うなら、アイデアを出すのが得意な人間にはアイデア出しだけをやらせる、ビジネスをプロデュースするのが得意な人にはそれに専念させる、事業運営に長けている人にはひたすらそれに邁進してもらう、といった、得意分野ごとの切り分けが必要ではないでしょうか。

いまの多くの日本企業で取られている、全員がオール3を目指すようなやり方では、特にアイデアマンは埋もれてしまいがちです。

しかし、そのための施策を打つことは、組織の構造を根本からつくり替えることを意味し、大きな経営問題になってしまいます。今回は敷居を下げ、明日からできる、「イノベーション行動を促すチーム単位の仕掛け」を紹介したいと思います。

われわれKDIで実践していることなのですが、個々のメンバーが、自分のビジネスタイトルをつくるのです。仕事の専門領域を自ら決め、それを名刺にも刷り込むのです。営業や経理といった既存の職種ではなくて、名前からして斬新な、新しい職種のほうがより望ましい。

例えば、私は「WOW!リサーチエクスプロラー(驚きの研究を行う冒険者)」と名乗っています。自称「セクシーワークスタイリスト(思わずぞくっとする仕事のやり方をスタイリングする人)」の女性コンサルタントもいます。結構、人気があるのが「場コンダクター」。場づくりの専門家ですね。

このビジネスタイトルを考えるために、それぞれ何カ月もかけています。

「自分は何がやりたいんだ」と自問自答しなければならないからです。「フィールド・マツリスト(現場で祭りを起こす人)」というタイトルを考えた人は実に1年かけました。最初は気軽に考えて発表するんですが、「どんな職業なのか」「本当にそれがやりたいのか」と、四方八方から突っ込まれ、悩みに悩むのです。この苦しい時間を経るからこそ、そこから出てきたタイトルが初めて自分のものになる。