ビジネスタイトルとはブランドです。自分たちの仕事ブランドを一生懸命考えるのです。ブランドができあがると、その分野における世界の第一人者になれるのです。同じ分野の仕事がどんどん振られるでしょうし、さまざまなアドバイスを求められ、人脈もできてきます。そうすると、その名に恥じないように、という自覚が生まれ、本を買い込んだりして自主的に勉強を始めるでしょう。
これがなぜイノベーション行動につながるのでしょうか。一人ひとりがある分野のプロになるわけですから、自分固有の世界観で仕事をとらえるようになるからです。
「私の仕事はA社の売り上げを上げることだ」という意識でいると、隣の同僚の仕事はあまり気になりません。でも、「プレゼン資料のマイスター」というタイトルを掲げた途端、隣の人が担当企業に出している資料のわかりにくさが気になって、自分の知識を教えたくなります。同じく、自分は「製造技術のプロ」という自覚を持った人なら、あらゆるプロジェクトの技術が気になり、気づいたことを指摘するようになります。つまりイノベーション行動が取れるようになるのです。私たちはこれを「分業のための専門化」ではなく、「協業のための専門化」と呼んでいます。
ファイリングの達人、マナーの鬼、文章師範、ビジネス書の目利き……些細なことでいいのです。そうやって、みんなが得意分野でつながる組織には、イノベーションの女神が微笑んでくれることでしょう。
(構成=荻野進介)