報われるのはスペシャリストだけ

スペシャリストという意味では、国際弁護士や海外の会計基準に対応できる会計士などは、今後も活躍の場が広がり、給料が上がる可能性もある。コンサルティングは現在でも平均年収が高い業種だが、能力のある人なら高水準を維持できるはずだ。

いずれの業界においても、とくに重要なスキルはグローバルな課題解決ができる能力である。どこに進出すべきか、どの国で何を売るべきか、どこと組むかなど。グローバルな市場で利益を生み出す仕事ができる人、ということだ。現状では英語力が必須であることはいうまでもなく、英語力に長けていることで一流企業に就職したり、一流企業を渡り歩いたりしている人は少なくない(ほかに力がないとしても)。

私はアベノミクスで非常に重要なのは労働市場改革だと思っている。日本は会社ごと、勤続年数ごと、役職ごとに給料が決まるが、欧米のように職種で給料を決めるようにすべきであり、欧米はだからこそ世界中から優秀な人材が集まっている。日本で働くホワイトカラーの人々は、自身が正当な給与をもらっているかを冷静に考えるべきだし、もらい過ぎている人は下がる可能性を認識したほうがいい。そして、転職を考える人、御子息が就職を控えている人は、「就社」ではなく「就職」が重要であることを認識されたい。会社に入るのではなく、職業、できれば専門性の高い職業に就く、のである。

AIにとって代わられる人は給料が下がるが、AIを開発する側の人は給料が上がる。戦略的なキャリアプランが求められる。

永濱利廣(ながはま・としひろ)
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
1971年、栃木県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年早稲田大学理工学部卒業後、第一生命入社。日本経済研究センター出向などを経て、2000年より経済調査部に異動。16年より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、一橋大学大学院商学研究科非常勤講師、跡見学園女子大学非常勤講師などを兼務する。主な著書として、『経済指標はこう読む』『日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』『知識ゼロからの経済指標』など多数。
(高橋晴美=聞き手、構成)
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