2013年から14年にかけて、米Googleや中国のBaiduなどの大手IT企業が企業買収や研究開発に巨額の投資をした技術がある。それが「ディープラーニング」だ。

これは、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする「機械学習」の一種。人の脳神経系をモデルにした情報処理システム「ニューラルネットワーク」を発展させたもので、画像認識や音声認識に優れる。たとえば猫の写真を何点も見せると、まだ見せていない種類の猫も「猫だ」と認識できるようになる、より人間に近づいたAI(人工知能)である。

AppleのAI「Siri」の音声認識にもディープラーニングの技術が採用されている。

東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏は、「AIがディープラーニングと身体性(行動ができること。ウェブ上を含む)、それから記号操作(言語の扱い)などができるようになると、『知能のアルゴリズム』の相当な部分まで実現されてくる」と話す。これが進めば、ホワイトカラーの仕事を代替するような技術へと発展することは間違いない。

そこでいま世界中で起きているのが、先に述べた技術獲得競争だ。ディープラーニングの学習アルゴリズムをブラックボックス化してしまえば製品を独占できる。日本は機能ありきのロボット開発が盛んだが、松尾氏は「AIなきロボットはいずれ開発競争で負ける」と断じる。

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