新興国で活躍できる企業か、そうでないか
もうひとつ認識しておきたいのは、同じ業界であっても、給料が上がる会社、下がる会社があるということである。
たとえば電機業界。製造に特化している企業は苦戦を強いられている場合もあれば、原発などを含むインフラ事業という武器も持っている企業など好調な企業もある。国内にも老朽化したインフラの更新、高耐久化の必要性があるし、まだまだインフラが未熟な新興国は多い。
電気製品では海外のメーカーに勝てない、価格競争にさらされる、という状況だとしても、インフラ整備の分野では、日本企業の技術力が必要とされる場面は多く、競争力も高い。そこにビジネスチャンスが見いだせる企業は強い、ということになる。部品を供給すれば新興国でも組み立てができるモジュール型の企業、とくに製造現場の人は給料が増えにくいが、同じ電機業界でもインフラ関連ができる企業でスペシャリストとして働ければ給料は上がる可能性あり、というわけだ。
電機に限らず、製造業は新興国から追随されるところは厳しい。日本の技術力はたしかだが、技術力が高いゆえにオーバースペックになり、価格競争で負ける、というところから抜け出せていない。儲かるイノベーションが必要なのである。3Dプリンターによって、日本の強みである金型の技術も輝きを失いかねない。
新興国の需要という面でいけば、食品業界や医薬品業界にも光がある。中国において、「メードインジャパン」の食品や医薬品がもてはやされているように、新興国の生活水準が上がれば、やがては安全性が高く高品質の日本の食品、医薬品の需要が高まる。ここでも給料アップの恩恵が得られるのは、専門性の高い職種の人だ。日本においても2040年までシニアの増加が続く推計となっており、健康関連業界における商品開発者は好待遇が得られる可能性もある。